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エビデンスに基づく取り組みは、自然相手の農業にも重要

明治大学 農学部 准教授 藤栄 剛

農業分野のビッグデータをEBPMに活かす

 私たちの食に関わる農業は、もちろん、非常に重要な産業分野です。ところが、若い農業従事者が減少し、高齢化が進むとともに、耕作放棄地も増えています。

 しかも、日本は食料自給率が高くないことを考えれば、農業政策の再構築は、私たちにとって大きな課題なのです。そういった意味でも、EBPMの推進には期待がかかります。

 しかし、EBPMを推進させていくために必要な、ミクロデータを集積させたビッグデータが農業分野においてあるのかと言えば、実は、日本には、「農林業センサス」や「農業経営統計調査」などの、世界に誇るべき豊かな農林統計が収集されているのです。

 特に、農林業センサスは5年に一度、全数調査が行われています。つまり、農業であれば、趣味の園芸のような形で行っている人は除き、国内の全農家が対象で、その数は200万サンプルほどにもなります。

 しかも、この調査は1950年(昭和25年)から行われているので、その蓄積総数は膨大なものになります。

 ところが、このデータは農林業の現状を把握することが目的であり、研究に活用することは目的外利用とされ、活用すること自体が非常に難しかったのです。

 すなわち、これだけの個票データの蓄積がありながら、例えば、集計して平均値を出すような使い方が多かったのです。

 その状況が変わったのが、2007年の統計法の改正です。これにより、従来は目的外利用とされていた活用が容易になったのです。

 もちろん、個票であるため取り扱いには細心の注意が必要で、個人情報は絶対に漏らしてはいけないなどの規制は当然です。

 しかし、ただの集計データとしてしか扱われなかった貴重なデータが活用できるようになったことの意義は、とても大きいと言えます。

 では、EPBMに基づいて、このデータはどのように活用することができるのか。それは、政策評価において、より厳密な因果関係に基づく分析を行うことだと、私は考えています。

 実は、すでに行われた政策に対して厳密な評価を行い、それを次の政策立案に活かすという取り組みが、これまではあまり行われてこなかったのです。

 例えば、日本の農業経営は家族経営が圧倒的に多いのですが、法人化を促進、支援し、生産力の向上を図ったり、地域農業の担い手を育てるという政策があります。その政策の効果を評価する際、法人化した農家と、しなかった農家の生産性や収益を単純に比較するのでは、評価には不十分です。

 というのも、法人化した農家は、そもそも、ある程度の規模があり、パフォーマンスを示せる農家なのです。それと、法人化できないような農家を単純比較しても、この政策の厳密な評価にはなりません。

 しかし、個票データの蓄積であるビッグデータを解析することで、その政策の結果における因果関係をきちんと捉えることが可能になると思います。それに基づいて政策を厳密に精査することができれば、それが、エビデンスに基づく評価と言えるわけです。

 そこまでの作業ができれば、その政策において、なにが達成でき、なにが達成できなかったのかが捉えられ、では、次にどんな政策を立てれば良いのかがわかってくるのではないでしょうか。

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