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ロジスティクスの視点で考える「物流危機は新ビジネスのチャンス」

橋本 雅隆 橋本 雅隆 明治大学 専門職大学院 グローバル・ビジネス研究科 専任教授

いま、物流危機が社会問題となっています。平成27年度の宅配便の取扱数量は約37億個で現在はさらに増加しています。国土交通省によると平成26年度のわが国のドライバー数は約83万人で、深刻なドライバー不足が発生しています。そのため、様々な対応策が考えられていますが、重要なのは目先の対応ではなく、いまある質の高い輸送サービスを維持し、さらに発展させていくための仕組みを考えることです。

宅配貨物急増のメカニズム

橋本 雅隆 なぜ、このように深刻なドライバー不足が発生しているのでしょうか。一つの原因はネット通販の急増にあるといわれています。たしかに近年、ネットで買い物をする機会が私たちの身の回りでも非常に増えているように思います。私たちの生活が大変せわしなく、家事をする時間が足りないこともその原因でしょう。就労女性の割合も増え、店舗でゆっくり買い物をする時間を確保することが難しくなっています。そこで、スマホやパソコンを使っていつでもショッピングを可能にしてくれる便利なネット通販の利用が急増しているのです。ところがドライバー不足もあり、買った商品の宅配が追い付かなくなってきました。

 ここで、ネット通販急増の仕組みを考えてみましょう。ネット通販は、インターネット上の仮想店舗と宅配便のネットワークの組み合わせでできています。消費者はリアルな店に買い物に行く時間コストと交通費を宅配料金で賄って時間を節約するわけです。一方で、ネット通販企業は、消費者から支払われた宅配料金から、宅配便企業への運賃支払いやネット通販企業自身が投資した物流拠点のコストの回収に当てることになります。一方ネット通販企業は、自ら商品を調達(生産)するか仮想テナントに出店してもらうことによって仮想店舗の品揃えを実現します。ここで、もし消費者が負担すべき配送料を「無料化(実際は当社負担)」して通販企業自身が負担すると、消費者の買物コスト負担が軽くなるのでネット通販の利用者が増えます。ネット通販企業の利用者が増えると、そのネット通販サイトの魅力が増して、そこで商売したい出店者やサプライヤーが増え、ネット通販のプラットフォームを提供する企業は、テナント収入増加や仕入れ価格の引き下げ、決済条件の有利化など、「送料無料化」の負担を大きく上回るメリットが得られる可能性があります。また、その急成長の過程でますます品揃えが拡大し、消費者にとっては通販サイトの魅力がさらに増します。これが、宅配貨物の急増の原因になっています。

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