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就職氷河期で変わった「当たり前の未来」
2024.03.20

人生のターニングポイント就職氷河期で変わった「当たり前の未来」

リレーコラム
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教授陣によるリレーコラム/人生のターニングポイント【61】

私にとってのターニングポイントは、大学卒業が就職氷河期と重なったことかもしれません。

愛知県で生まれ育った私は、それ以外の地域で生活することなど考えたこともありませんでした。卒業後は名古屋の企業に就職するか、地方公務員になるのだろう……。家から一番近い公立高校、国立大学へと進学していった私は、漠然と「それが当たり前の未来だ」と思っていました。

しかし、大学に入って企業の採用計画を立てるも、時代は就職氷河期まっただ中。子どもの時に聞いていた「Japan as Number One」「24時間働けますか?」の世界から、「失われた20年」の世界へと変わっていました。

当時は、日本社会にとっての転換点でもあったと思います。専業主婦が減って共働きが増えるなど、社会情勢は家庭にも影響を及ぼしていました。私にとっては、父が53歳で早期退職したのも大きかったです(のちに起業し、私の研究分野である中小企業と共通点を持ちました)。

そんな中、タイミングは前後しますが、学部3年次に文学部から経済学部へ転学部し、恩師である家森信善先生(現・神戸大学経済経営研究所教授)のゼミナールで学ばせてもらいました。そこでは学問はもちろんですが、「会社員や公務員ではなく研究者という道もある」ということを教えていただきました。

家森先生は当時まだ30代でしたが、とても優秀で人柄も抜群に素晴らしい先生でした。私は「いつか、この先生と一緒にお仕事がしたい」と思い、大学院への進学を決めました。家森先生はのちに日本を代表する金融論の研究者になられました。そのときの私の選択は、今も正しかったと思っています。

そうして大学院生になってからは、アメリカに留学する機会がありました。自分が生まれて育った国を離れてみると、日本では正しいと思われていることが、必ずしも外国では正しいわけではないことを知りました。複数な視点や選択肢を得て、物事におおらかになったと思います。

子どもの頃に描いていた未来にせよ、社会の慣習や風潮にせよ、「当たり前」と思っていたことも案外、あっさりと変わっていくものです。なにより、視野が広がると自分が楽しくなりますから、私のゼミの方々には機会があれば留学をお勧めしています。

※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

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