
人生のターニングポイントメキシコで衝撃を受けた、人々のバイタリティ
教授陣によるリレーコラム/人生のターニングポイント【28】
私は学生時代からバックパッカーとして様々な国々を訪れたのですが、一つのターニングポイントとしてあげるとすれば、やはりメキシコとの出会いです。
大学時代の1997年から98年にかけて、メキシコに留学しました。といっても、私はスペイン語学科でもなく、スペイン語の面白さも知らず、ましてやメキシコ文化や社会の奥深さや歴史の豊かさについても、それまでほとんど知る機会がありませんでした。
留学自体はありきたりな理由で、とにかく学生時代に一度留学を経験したいというものでした。しかし、大学のゼミで国際貿易や南北問題を勉強していたこともあって、いわゆる「途上国」には関心がありました。
ちょうどその頃、1994年にNAFTA(北米自由貿易協定)が発行し、1996年にはペルー大使公邸占拠事件が起きたこともあり、もっと中南米のことが知りたいと思っていたのです。
メキシコでは特に、日本では見たことがなかった大規模デモに頻繁に遭遇したことに衝撃を受けました。当時の私は、その背景にある人々の政治意識や歴史的経緯などは深く理解していませんでしたが、その光景は私にメキシコ人の生きる力、バイタリティを感じさせました。
同時に、人はとても温かくて良い国ですが、貧富の格差や根深い社会問題が存在することを知りました。それは今でも私の研究テーマと深く関係しています。
少し「遠回り」をしてから博士課程に進み、博士論文のために「日墨交流計画(現在、日墨戦略的グローバル・パートナーシップ研修計画と改称)」という国費留学試験に合格し、その後、幸運にもメキシコ国立自治大学(UNAM)経済研究所に客員研究員として受け入れてもらいました。
20代から30代前半にかけて中南米やカリブ海地域の多くの国々を、じっくり時間をかけて訪れる機会にも恵まれ、その経験も私にとって大きな財産になっています。
まったく異なる文化や異なる世界に現地で直接触れることは、多角的に物事を見る能力を身につけるだけでなく、自分にとって何が大切かを理解することにつながるのではないでしょうか。
※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。