
人生のターニングポイント東日本大震災で急転した、進むべき道
教授陣によるリレーコラム/人生のターニングポイント【32】
東日本大震災が私のターニングポイントになりました。
私の研究テーマは「電力」です。電力を選んだ理由は、現代生活には欠くことのできない重要なインフラだと考えたからでした。
震災前は研究者も電力会社も、原子力発電があれば将来にわたり電力には何の問題もないと思っていました。発電時にCO2を出さないクリーンさがあり、火力に比べエネルギー効率がよかったからです。
しかし東日本大震災が起きると、日本の原発がすべて止まってしまいました。再開の見通しも立ちません。そこで注目されたのが、風力や太陽光などの再生可能エネルギーでした。
しかし、再生可能エネルギーは天気や地形の影響を受け発電量が安定しないため、大量に導入しようとすると需要と供給のバランスが崩れやすいという欠点があります。
このまま電力源を再生可能エネルギーに頼ってしまうと、大規模な停電などにつながってしまう恐れが大きいということです。
自分のなかで「何とかしなくてはいけない」というモチベーションが高まりました。電力を研究する者として、この難しい課題に挑戦することに大きな使命感を感じたのです。
私の研究は、狭い地域ごとに電気を需給する次世代電力ネットワークや、各家庭で電気を貯めておける蓄電池などへと向かうことになりました。
これは、後に起こる胆振東部地震で北海道全域が停電したブラックアウトや、台風による千葉県の長期大停電での課題解決を追究する一助となったのです。
「ピンチはチャンス」という言葉があります。何かにつまずいた時には、それを糧にして新しい解決法を探せば、さらに次の大きな成果につなげられるのではないでしょうか。
※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。