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叱られるのも悪くない、と思った研究室時代

光永 威彦 光永 威彦 明治大学 理工学部 専任講師

考え方や価値観が変わるほどの出来事に遭遇したら、それは成長へのチャンス。明治大学の教授陣が体験した人生のターニングポイントから、暮らしや仕事を好転させるヒントを探ります。

教授陣によるリレーコラム/人生のターニングポイント【2】

大学の研究室の坂上恭助先生(明治大学名誉教授)と出会ったことが、人生のターニングポイントだったと思います。

建築デザイナーに憧れ、意気揚々と建築学科に入学したのですが、クラスメートたちの建築デザインへの熱意や技術は、私とは比べものにならないほど高いレベルにあると、すぐに思い知りました。

入学早々、挫折感を味わった私は、勉強する気力も薄れ、学費を稼ぐ必要があったこともあり、アルバイトに精を出すだけの毎日を送ることになってしまったのです。

そんな気持ちのまま、研究室に入る学年の大学3年生になりました。私が選んだのは、暮らしに不可欠な「水」に焦点を当てた、給排水衛生設備の研究室です。

ここにいらしたのが、坂上恭助先生でした。先生は、私がこれまで出会った中でも、いちばん厳しく叱咤される方でした。

それまで、学校でもアルバイト先でもほとんど「叱られた」経験のない私は、最初はとても戸惑いましたが、その叱りに真摯に向き合うことで、先生の常に理論的かつ的確で、私の成長を願う気持ちが伝わってきました。

その気持ちに応えるべく、心機一転、努力したことで、その後、自身の成長も感じられるようになり、勉学や研究がどんどん楽しくなりました。

「叱り」には、成長を促すものと、そうでないものがあります。叱られることは誰でも憂鬱なものですが、叱られている自分を俯瞰して、叱られている理由を考え、自分の成長の糧とすることが重要と考えます。

今は私が教える立場で、学生が理解する意欲を見せない場合など叱るべきと判断した時は、厳しく叱るようにしています。しかし、その時は、感情的にはならずに、学生の成長を促す言い方とするように心がけています。

怒りにまかせた人の言葉は、合理性がなく反発を受けます。しかし重要なことを伝えようと、心をもって叱ってくれる人の言葉には説得力があります。叱る人、叱られる人の双方が、共に冷静であれば、叱られる時は成長の機会といえます。

※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

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