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#1 児童虐待は親が悪いから起こる?

加藤 尚子 加藤 尚子 明治大学 文学部 教授

親側の大変さや困難を理解することも必要

毎年、夏になると、厚生労働省が前年度の児童虐待相談対応件数を発表します。2017年に公表された数は12万2578件で、過去最多となりました。これは児童約200人に1件の割合になります。もっとも、これは児童相談所に通報などがあり、対応した件数なので、児童虐待自体が本当に増えているというよりも社会がこの問題にちゃんと取組みだした証なのですが、子どもへの虐待という問題が多く起きているというのは事実です。

児童虐待というと、短気だったり粗暴だったりする親の性格が原因で起きると思われがちですが、実のところは、家庭の経済的な問題、夫婦関係、ご近所との関係、子どもの性格など、様々な複数の要因が絡み合って起きています。親は、こうした問題を抱えて気持ちや時間のゆとりがなくなり、子どもに対しても、ゆとりをもって接するということができなくなってしまうのです。さらに、親自身が子どものときに、叩かれたり、怒鳴られたり、ネグレクトのような虐待的な養育を受けていると、それが子育ての基本的なモデルだと思ってしまい、自分の子どもに対しても同じように振る舞うということもあります。

つまり、一般に、酷い親と可哀想な子どもという構図を描きがちで、一方的に悪い親を告発する、摘発する、罰する、子どもを隔離して守る、という意識で通報し、それによって児童虐待は減ると思われがちですが、それでは問題解決は難しいのです。虐待をしている側の親が、どんなことに困っていて、どういう苦労があるのか、親側の大変さや困難を理解し、そこから働きかけていくことが、本当に必要なことです。子どもも、基本的には親のことが好きです。親から虐待を受けていても、やはり、親に受け入れられたいと思うし、「良い子ね」と褒められたいと思っています。子どもにとって一番の幸せは、自分の親と幸せに一緒にいられるということなのです。

では、どうしたら親子が快適な生活を送れ、児童虐待をなくしていけるのか、考えていきましょう。

次回は、しつけと虐待の違いついてお話しします。

#1 児童虐待は親が悪いから起こる?
#2 何がしつけで、何が虐待?
#3 夫婦間のDVも児童虐待になるの?
#4 虐待の影響は大人になっても続くの?
#5 子育ては家族の責任?

※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

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