
2022.08.09
明治大学の教授陣が社会のあらゆるテーマと向き合う、大学独自の情報発信サイト
めまぐるしく変化する世界情勢において、企業や組織が生き残っていくために、どんな人材が求められているのか。
さまざまな分野に精通した明治大学の教授陣が考える、これからの日本を担うリーダーに必要な力とは。
日本人には欧米で言うところの本来の意味でのリーダー観がないように感じます。一般に、リーダーの代表例といえば会社の社長が思い浮かべられがちですが、日本組織のピラミッドでは、社長は据え物と言えます。事が起きたら責任をとって辞めるだけで、権威はあるものの、あまり強いコントロールは発揮できません。実は、リーダーの資質は職位とは関係ないのです。マネージャーとは違います。欧米的なリーダーは権力(コントロールと権威)を持ち、環境そのものを変えてしまうので、日本ではおそらく受け入れられないでしょう。日本人は役割構造を重要視していて、それを壊されるのを嫌がるからです。日本では、組織の長に権力(コントロールと権威の両方)を持たせないことが生活の知恵のようです。
真のリーダーとは外部環境条件を受容させつつ、コントロールしようとする人間です。自己組織を形成し、人が自ずとついてくるような決断をします。ただしイエスマンばかりの取り巻きをつくったら終わりです。組織の硬直化を招きかねません。そのためリーダーは孤独に耐える必要があります。悪くも言われますし、辛いことが多く、並大抵でない決意が必要です。また、強いリーダーとともに歩むことは痛みを伴います。
環境を抜本的に変えることが求められる今の日本には、本当はリスクテイクの高いレベルと将来を見据えた揺るぎない覚悟を備えた人物こそが、リーダーとして求められています。その意味で、痛みを伴わない甘い公約をする政治家は、今求められるリーダーではないことを国民が強く認識することも、今後の日本社会の持続性を考える上では重要ではないでしょうか。
※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。