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うつ病の対処に必要な「援助希求」という能力

諸富 祥彦 諸富 祥彦 明治大学 文学部 教授

自分の身を守るために自己チェックを

 では、自分がうつ状態にあると判断する3つの目安をご紹介します。
 まず、睡眠障害があるかどうか。睡眠障害には、入眠障害(ふとんに入ってもなかなか寝つけない)、中途覚醒(深夜に目が覚めてしまう)、早朝覚醒(朝早く目が覚めてしまう)の3つの状態があります。要は、熟眠できないということ。仕事をミスして睡眠障害が続くようであれば、それは一時的な気の落ち込みではなく、うつが疑われます。
 次に、涙がこぼれて止まらなくなる。感情の高ぶりがあるわけでもなく、いつの間にか自然と涙がポロポロこぼれ、止まらなくなることがある場合は、うつを疑ってください。
 三番目は、胃の調子がいつも悪い。いつも胃薬を飲んでいる人の8割は、隠れうつといわれています。実は、胃薬には抗うつ作用の成分が入っており、それが気をまぎらわせるので、うつの発見が遅れることもあります。一度、精神科の受診やカウンセリングを受けた方が良いでしょう。
 こんな実例があります。責任ある仕事に就いていた会社員の方が、ずっと胃の調子が悪く、内科で診てもらいましたが、胃に特に悪いところは見つからず、大丈夫といわれました。ところが、会社の重要な会議の前に突然立ち上がることができなくなり、救急車で運ばれ、検査されましたが、やはり胃に特別悪いところは発見されませんでした。この方は、どう対処したら良いのかわからなくなり、再び、重要な会議の前に立ち上がれなくなった日の夕方、自殺してしまいました。
 胃を診てもらいに行くと、病院は胃の検査しかしません。胃に悪いところがなければ、精神科で診てもらうようにアドバイスすることはほとんどないのです。いまの日本の医療の現状では、私たち自身がメンタルヘルスの知識をもち、自分で自分を守る必要があります。

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