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いま、「終活」について考えるとき ―団塊世代から団塊ジュニア世代へと移行する問題―

明治大学 法学部 准教授 小西 知世

社会の働き手が、介護に取られていくという問題

 やや福祉よりの話になるが、現在、高齢者が自らの意思で、長期間にわたり病院でケアを受けるということは医療保険制度上難しく、実際には自宅か施設でケアを受けることが基本となってきている。そうすると、ヘルパーさんや介護福祉士さんに自宅に来てもらったり、施設でケアをしてもらったりということになる。しかし、ヘルパーさんや介護福祉士さんも人手不足でなかなか手配できず、施設もいっぱいで入れないといった状況もあるため、結局のところ家族が介護を引き受けざるをえない状況になっている。
では、高齢者の介護を担う家族がどういう人たちかと考えてみると、もちろん配偶者の場合もあるが、高齢者の子ども世代である30歳〜50歳代の働き盛りがどうしても中心になってしまう。この年代の男女が、介護休業さらには介護離職をすることは、社会の経済活動の側面からみても大きな損失であり、それがもとになって今後、不況を引き起こす危険性すら孕んでいるように思える。また介護が苦痛になって心中を図るケースは後を絶たないだけではなく、在宅ケアをうけていた認知症の高齢者が徘徊した後に電車に轢かれて、鉄道会社から損害賠償請求を受けたケースも起こっている。高齢者人口が数百万人にも膨らむ時代において、このまま家族に頼る介護の仕組みが残っていくことによって、さらに大きな社会問題を引き起こす可能性はないだろうか。

本当の正念場は、団塊ジュニアが80代を迎えるとき

小西知世教授 厚生労働省では2025年に向けてのロードマップを提示している。それを実現するための地域包括ケアシステムを構築するための法律もできた。しかし、政治も、法律も、経済も、社会そのものがいまこの場を乗り切るために、本質的なものに目を向けず、小手先のやりやすい解決方法へと流れているのではないか。「水低きに流れ、人易きに流れる」そんな時代のような気がする。たしかに、差し迫った現実感のない、リアリティもない、何よりもそんなこと考えたくもないという性質の問題であるのかもしれない。だが、現実的に将来の状況をイメージし、それにどう立ち向かっていけば良いのかをもっと真剣に考え、確実に階段をのぼっていかなくてはならない時代が来ているのではないか。
私は、私たちの住んでいる社会が正念場を迎えるのは、これからだと思う。団塊の世代の高齢化も問題だが、本当の正念場は、団塊ジュニア(私もそうである)の世代が80代を迎えるときだと思っている。医療や年金などの制度は、団塊の世代までは、なんとか維持できるだろう。そして、私たちの住んでいる社会の貯金は、おそらく団塊の世代ですべて使い切ってしまう。また、団塊の世代はそれに近い数の団塊ジュニアを生んだが、団塊ジュニアはそうではない。
我々、団塊ジュニアは、社会を維持していくために、何をしなくてはならないのか。もちろん我々自身のことも考えなくてはならないが、我々の子どもたち世代が、きちんと笑って最期を迎えられる世の中を残してあげないといけないと思う。自然環境を残さなくてはならないのと同様に、医療や福祉も残してあげないといけないのだ。

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