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2023.08.02

再生可能エネルギーを増やすには新しい電力ネットワークが必要

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再生可能エネルギー拡張のための課題

 いま、日本は、2050年までにカーボン・ニュートラルを実現することを目指しています。これは、日本に限らず、欧米など世界的な取り組みです。その背景には、地球温暖化や気候変動の元凶と目される温室効果ガスを削減しなければならないという喫緊の課題があるからです。

 そのためには、化石燃料を燃やすことでCO2の排出量が多い火力発電を止めることが重要になります。そこで、再生可能エネルギーの主力電源化が急務になっています。

 そのためには、太陽光発電や風力発電施設を増やせば良いと思われると思います。しかし、ことはそう簡単ではないのです。それは、太陽光発電も風力発電も、発電量が天候に左右されるからです。

 先にも述べたように、電気は、需要と供給のバランスをとることが安定した供給に繋がります。その意味では、火力発電や原子力発電などはコントロールしやすく、安心でした。

 一方、再生可能エネルギーによる発電はコントロールしづらいため、需給バランスが急激に崩れ、ブラックアウトや長期停電が起きる可能性が高まってしまいます。再生可能エネルギーを主力電源化していくためには、こうした課題をクリアしていかなければならないのです。

 しかし、それは、いままで、コントロールしやすい発電システムを基盤に電力ネットワークが構築されてきたからでもあります。

 その意味では、災害によって注目されたマイクログリッドや安価な大型蓄電池の開発は、再生可能エネルギーを拡張していくためにも重要であり、それが、次世代の新たな電力ネットワークにも繋がっていくと考えられます。

 一方で、私たち生活者も、節電を心がけた生活が重要になってきます。

 近年ではデマンドレスポンスという、インセンティブのある節電協力依頼のシステムもあります。そういったシステムも利用しながら、かつてのように電気を当たり前のように使うことが当たり前ではないと、意識を切り替えていくことは、私たちの課題と言えます。

 そうした意識が高まれば、例えば、各戸に太陽光パネルを設置するのは、いままでは売電が目的でしたが、今後は、各家庭が電気を自給自足する設備として設置するようになり、それが当たり前になるかもしれません。それは、最小単位のマイクログリッドと言えます。

 実際、ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス(ZEH)などもハウスメーカーなどによって開発されています。

 私たちが電力消費を削減していけば、需給のバランスをとるために、電力会社は発電量を減らさざるをえません。

 それが、カーボン・ニュートラルやネットゼロ社会の実現に繋がり、私たちの生きる環境や地球を持続可能なものにしていくことにも繋がります。カギは私たちが握っているとも言えるのです。


英語版はこちら

※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

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