
2023.03.23
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租税負担を回避する目的のために各国の法律や税率のギャップを利用する企業があることは事実です。特に、経済がグローバル化し、企業の多国籍化が進む現代では、租税回避がより巧妙になっていることから、それを指摘することも簡単ではありません。
従来の考え方では、企業の事務所や生産設備などの物理的な拠点(PE)があることが、その国で、その企業が事業を行っている証明であり、法人税を課す根拠ともなっていました。
ところが、GAFAと言われる企業に代表されるIT関連の多国籍企業は、ビジネスにおいて従来のPEをもたなくても、各国で事業を行うことができます。
例えば、タックスヘイブンにサーバーを設置して、あとはインターネットによって各国のユーザーにデジタルサービスを提供するようなビジネスモデルです。
ネット環境さえ整っていれば、PEのような物理的な施設がなくても、本社のある国以外のユーザーが支払う課金や情報によって企業は収益を上げることができます。さらに、そのユーザーが住む国では法人税を納めなくてもすむという図式になります。
つまり、ユーザーのいる各国にとっては、従来の租税法ではこれらの企業に課税ができず、大きな収益を上げている多国籍企業に大規模な租税回避を行われていることになるわけです。
そのため最近では、こうしたサービスの実態に応じた課税を各国ができるようにする税制度や、デジタルサービスによる収益に一定の税率で課税するデジタルサービス税を導入する動きがあります。
しかしこれに対して、IT企業を多く有する国が、自国の企業を標的とする仕組みだと反発しているため、今後、こうした新たな経済取引に対する税制度がどのような形になるのか、注目していく必要があります。
また、タックスヘイブンを利用した租税回避を問題視し、法人税の最低税率を国際的に統一する動きもあります。紆余曲折があり、それは15%になりそうです。
タックスヘイブンから見ると15%は高い税率ですが、最高で約30%の日本などの先進国にとっては低い税率です。しかし、低税率国の合意を含めたグローバル・スタンダードを作ることは必要であり、不当な税の競争を避けるためにも各国の協力は不可欠でしょう。
そういった意味では、租税回避対策は、国際的な税制度が構築されていくきっかけになるかもしれません。