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スポーツで町を元気にするシナリオ ~ ソーシャル・イノベーション

金子 郁容 金子 郁容 明治大学 経営学部 特任講師(退任)

地方創生が謳われ、町や地域を元気にする、活性化させる活動が盛んです。その取組み方は様々ですが、スポーツを通した活動は、地域活性化の一つの大きな鍵となります。また、ソーシャル・イノベーション(social innovation)といわれる活動のポイントが見えてきます。

新しい観点から、活動の継続と広がりを生み出す

金子 郁容 ソーシャル・イノベーションというと、社会を変革するような大規模な活動のイメージがありますが、その基本にあるのは「新しい観点を取り出して実行する」ということです。行政が大規模開発をしたり、企業や資産家が大型投資をする等ということがあっても良いと思いますが、日常的な身近なところから社会のあり方を新しい、面白い形にするという取組みもあると思います。

 ソーシャル・イノベーションの支援組織Ashokaの創立者であり、私も親交があるビル・ドレイトン氏は、これまで数千人のアントレプレナーを目指す若者を支援し、育てて来たこの分野での中心人物です。そのドレイトンは、ソーシャル・イノベーションのポイントは3つあると言います。「事業性と継続性を実現する」、「他の組織が真似することで広がる」、「国や行政の制度を活用、促進することで新しい展開を起こす」です。

 「他の組織が真似することで広がる」というのはちょっと面白い発想です。例として、アメリカの事例ですが、KaBOOM!というNPO組織を立ち上げたダレル・ハモンドの取組みがあります。孤児として施設で育った彼は、すべての子どもが歩いて行けるところに遊び場を作る、というコンセプトを立てました。KaBOOM!では、遊び場を1日で作るマニュアルを作り、多くの人に協力してもらい、共有する活動を始めました。すると、さまざまな地区の地域住民たちがボランティアで何百人も集まり、ジャングルジムを作ったり、小さなプールを作ったりと、丸一日で子どもたちの遊び場を作ってしまうのです。この取組みによって、全米ですでに2000ヵ所以上の公園ができました。

 ソーシャル・イノベーションには、人を惹きつけるコンセプトと、それを実現するいろいろなツール、それに多くの協力者が重要です。KaBOOM!が良い例ですが、社会をいっぺんに大きく変革するのではなく、地域の人たちが共有する関心と新しい観点の下で楽しく協働し、自分のことというより子供や地域にとって意味のある活動を行うことがその秘訣です。

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