腸内細菌によるポストバイオティクスの産生
私たちの研究グループはまた、腸内細菌によるポストバイオティクスの産生に着眼しています。ポストバイオティクスとは、食事成分を基質とし、腸内細菌によって作られる機能性代謝物のことです。
腸内細菌については、腸内フローラ(腸内細菌叢)という言葉を聞いたことがある人も多いと思います。それは、私たちの腸内に棲んでいる腸内細菌全体のことを指します。腸内細菌の種類は100以上、全体の数は1000兆個にも及ぶと言われ、個人差が大きいのも特徴です。
腸内細菌の中には、私たち哺乳類にはないユニークな酵素活性を持つものがあります。
α-リノレン酸についても、ある種の腸内細菌はαKetoA(アルファケトエー)という物質を作ることができます。一方、αKetoAは私たち哺乳類には作ることができません。
私たちの研究グループは、αKetoAがアレルギー性皮膚炎や糖尿病に有効であることを実験動物を用いて解明しました。αKetoAはヒト便中にも検出されますが、その量は個人差が大きく、腸内細菌叢の違いがその要因のひとつと考えられます。
以上より、私たちの体内での代謝活性に加え、腸内細菌叢の個人差も、ω3脂肪酸の免疫制御活性に影響を与える要因となりそうです。
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