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低価格志向と食の安全・安心

明治大学 農学部 専任講師 中嶋 晋作

日本人の食の消費行動は、バブル崩壊後の1990年代に大きく変容しました。そして、2020年、コロナ禍を機に、また大きく変わるかもしれません。そこにはどのような要因があり、その中で、私たち消費者は、食に対してどのような意識をもっていけば良いのでしょう。

1990年代に大きく変わった日本の食料消費

中嶋 晋作 日本の食料消費は戦後の高度経済成長期を通じて、右肩上がりに伸びていましたが、1990年代以降は、減少が続いています。

 総務省の「家計調査」を基にした農水省のデータによると、2人以上の世帯における食料の消費水準指数は、1981年を100とすると、2011年には86まで減少しています。

 特に、消費が落ち込んでいるのがお米です。高度経済成長が始まった1960年頃、1人あたりの年間消費量はおよそ120kgありました。1人で月に10kgずつ食べていた計算です。

 それが、いまでは年間54kg程度にまで減少しており、この60年間に、1人あたりのお米の消費量は半分以下になっています。

 そのほかにも、野菜や魚などの生鮮品が消費量を大きく減らしています。

 要因はいくつかありますが、一つは、少子高齢化が急激に進み、消費人口が減少していること、食べる量が減ってくる高齢者が増えていることが挙げられます。

 また、バブルの崩壊によって家計の収入が減り、食事をファーストフードなどで済ませてしまうなど低価格志向の消費者が増えてきたことも要因の一つです。

 さらに、女性が働く機会が増えましたことにより、それまで女性が担っていた家庭調理を行うことが難しくなり、お米や魚、野菜の消費が落ち込んだと考えられます。

 一方で、焼くだけでも調理が済む肉類は外国産の輸入が増え、肉類は魚や野菜に比べて相対的に安くなり購入しやすくなりました。加えて、主食としてお米に変わったパンなどとも相性が良く、消費量は落ちていません。

 つまり、バブル崩壊を機に始まった経済的要因や社会構造の変化が、食の消費行動にも大きく影響しています。

 食品は安全・安心や健康に直接関わります。経済的理由でファーストフードばかり食べていたり、調理の手間がかかる生鮮品を避けてばかりいることは、好ましいことではありません。

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