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低価格志向と食の安全・安心

中嶋 晋作 中嶋 晋作 明治大学 農学部 准教授

安全・安心とともに見直された「健康」という付加価値

 高度経済成長時代は、いわば、作れば売れる時代でした。これをプロダクトアウトと言います。それに対して、消費者の求めているものを捉えて作り、市場に出していくことをマーケットインと言います。

 では、安くて調理の手間のいらない加工品を作っていけば売れるのかというと、実は、そうとも言えません。消費志向の多様化が食においても表れています。

 例えば、低価格な食品を好んで消費する、あるいは、消費せざるをえない層がある一方で、高くても国産品にこだわったり、安全・安心なものを選んで消費する層もあります。つまり、経済的要因による格差から、差別化された食市場が形成されています。

 また、和食や、洋食、中華、さらに、辛い系やあっさり系など、好みの多様化や流行もあります。

 消費者のこうした様々な志向や嗜好に対応することは、食品企業にとっても大変です。つまり、マーケットインにこだわるあまり、消費者に振り回されることになりかねないのです。かといって、それをしなければ売れません。その舵取りは非常に難しくなっています。

 しかし、2020年のコロナ禍が、また変化の一つのきっかけになるかもしれません。

 例えば、自粛生活が進んだことにより、お米をはじめ、食料消費が急に伸びました。ステイホームにより家庭調理が増えたことが考えられます。

 それとともに、食の安全・安心があらためて見直されるようになりました。マスクもそうですが、輸入品よりも国産品の方が安心できることを多くの人が実感したと思います。

 例えば、2000年代の初頭にはBSE問題で、アメリカ産牛肉の輸入差し止めがあったり、国内でも、食品の産地偽装や食材偽装、消費期限切れ食品の再販売など様々な問題が続き、消費者の間には食品に対する安全・安心の意識が高まりました。

 いまでは、食の安全・安心は当たり前のことになっています。コロナ禍は、それがあらためて見直されるきっかけになったと思います。

 食の安全・安心がクローズアップされていますが、安全・安心の次にくるのは「健康」ではないかと思います。

 一時は、生活習慣病対策が非常に注目され、食においてもいわゆるトクホなどが人気になりました。

 高齢化がさらに進んだことを考えると、あらためて「健康」を付加価値とする食品を、食品産業や農業から提案することは、食市場に受け入れられやすいのではないかと思います。

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