明治大学の教授陣が社会のあらゆるテーマと向き合う、大学独自の情報発信サイト

腸内環境は免疫制御のカギ!

長竹 貴広 長竹 貴広 明治大学 農学部 准教授

必須脂肪酸の代謝によるアレルギーの制御

 様々な食物成分の機能性が明らかになりつつありますが、必須脂肪酸もそのひとつです。必須脂肪酸には、ω3(オメガスリー)脂肪酸と、ω6(オメガシックス)脂肪酸の2系統があります。近年、健康に良いとして注目されているアマニ油はω3脂肪酸のα-リノレン酸を豊富に含んでおり、サラダ油の原料にもなっている大豆油の10倍以上にもなります。

 実験用マウスの飼料にアマニ油または大豆油を用いてそれぞれ飼育すると、アマニ油群において食物アレルギーの発症が抑制されることが分かりました。すなわち、食事で摂取する脂肪酸組成の違いがアレルギーの発症を規定していることが分かりました。

 そのメカニズムとして、α-リノレン酸が体内の酵素で代謝されることで抗アレルギー物質に変換され、これが実効分子として食物アレルギーを抑制することが明らかになりました。さらに一連の研究により、アマニ油餌で飼育することで動脈硬化やアレルギー性鼻炎の症状が軽減されること、さらに抗アレルギー物質として働く代謝物に複数の種類があることが分かってきました。

 ω3脂肪酸から生じる複数の抗アレルギー物質は、標的となる受容体や免疫細胞が異なることが判明しています。

 このことは、同じ食事をしても各人の代謝活性が異なると、ω3脂肪酸から作られる抗アレルギー物質の種類や産生量が異なり、得られる免疫制御活性に個人差が生じることを示唆しています。

社会・ライフの関連記事

「道の駅」には、地域活性化の拠点となるポテンシャルがある

2024.3.14

「道の駅」には、地域活性化の拠点となるポテンシャルがある

  • 明治大学 商学部 特任准教授
  • 松尾 隆策
行政法学で見る「AIの現在地」~規制と利活用の両面から

2024.3.7

行政法学で見る「AIの現在地」~規制と利活用の両面から

  • 明治大学 法学部 教授
  • 横田 明美
LGBTQ問題の法整備の遅れと最高裁の視点

2024.2.29

LGBTQ問題の法整備の遅れと最高裁の視点

  • 明治大学 専門職大学院 法務研究科 教授
  • 清野 幾久子
地球のエネルギー問題・環境問題を解決へと導く人工光合成

2024.2.22

地球のエネルギー問題・環境問題を解決へと導く人工光合成

  • 明治大学 理工学部 准教授
  • 岩瀬 顕秀
COVID-19による経済への影響と支援策から見えた、日本の危機

2024.2.15

COVID-19による経済への影響と支援策から見えた、日本の危機

  • 明治大学 専門職大学院 ガバナンス研究科 教授
  • 加藤 竜太

新着記事

2024.03.21

ポストコロナ時代における地方金融機関の「新ビジネス」とは

2024.03.20

就職氷河期で変わった「当たり前の未来」

2024.03.14

「道の駅」には、地域活性化の拠点となるポテンシャルがある

2024.03.13

興味関心を深めて体系化させれば「道の駅」も学問になる

2024.03.07

行政法学で見る「AIの現在地」~規制と利活用の両面から

人気記事ランキング

1

2020.04.01

歴史を紐解くと見えてくる、台湾の親日の複雑な思い

2

2023.12.20

漆の研究でコーヒーを科学する。異色の共同研究から考える、これか…

3

2023.09.12

【徹底討論】大人をしあわせにする、“学び続ける力”と“学び続けられ…

4

2023.12.25

【QuizKnock須貝さんと学ぶ】「愛ある金融」で社会が変わる、もっと…

5

2023.09.27

百聞は“一食”にしかず!藤森慎吾さんが衝撃体験した味覚メディアの…

連載記事