2024.03.21
腸内環境は免疫制御のカギ!
長竹 貴広 明治大学 農学部 准教授必須脂肪酸の代謝によるアレルギーの制御
様々な食物成分の機能性が明らかになりつつありますが、必須脂肪酸もそのひとつです。必須脂肪酸には、ω3(オメガスリー)脂肪酸と、ω6(オメガシックス)脂肪酸の2系統があります。近年、健康に良いとして注目されているアマニ油はω3脂肪酸のα-リノレン酸を豊富に含んでおり、サラダ油の原料にもなっている大豆油の10倍以上にもなります。
実験用マウスの飼料にアマニ油または大豆油を用いてそれぞれ飼育すると、アマニ油群において食物アレルギーの発症が抑制されることが分かりました。すなわち、食事で摂取する脂肪酸組成の違いがアレルギーの発症を規定していることが分かりました。
そのメカニズムとして、α-リノレン酸が体内の酵素で代謝されることで抗アレルギー物質に変換され、これが実効分子として食物アレルギーを抑制することが明らかになりました。さらに一連の研究により、アマニ油餌で飼育することで動脈硬化やアレルギー性鼻炎の症状が軽減されること、さらに抗アレルギー物質として働く代謝物に複数の種類があることが分かってきました。
ω3脂肪酸から生じる複数の抗アレルギー物質は、標的となる受容体や免疫細胞が異なることが判明しています。
このことは、同じ食事をしても各人の代謝活性が異なると、ω3脂肪酸から作られる抗アレルギー物質の種類や産生量が異なり、得られる免疫制御活性に個人差が生じることを示唆しています。