2024.03.21
課題は地域にあり ―求められる自治体議会の改革と住民・行政の「協働」―
牛山 久仁彦 明治大学 政治経済学部 教授求められる「協働型自治体経営」
地方分権改革の推進には自治体政府の力量拡大が求められるが、それは地域社会に暮らす住民にも問われてくることだ。そこで求められてくるのが、住民と行政の「協働」である。自治体行政は、深刻な財政危機の中、かつてのようなバラマキ型の行財政運営が困難であり、多くの住民が望む施策に効率的に財源を配分していかなければ、自治体運営がままならない状況が生まれている。また財政危機は行政サービスの供給側が多様化することを必然のものとした。こうしたことが地域社会における住民の役割を変化させ、住民と行政の「協働」が必要とされる背景にある。
具体的には、政策形成の過程に市民が参加する「協働」があり、すでに全国の自治体で具体化しつつある。地方自治の本質ともいうべき住民自治を進める観点からも、住民と行政の「協働」による政策形成を進めることは重要である。もう一つの「協働」が、公共サービスの提供である。すでに高齢者介護や子育て支援の現場で、多くのNPOや市民が公共サービスを担い、重要な役割を果たしているのは周知の通りである。もともと、日本では、自治会・町内会などが地域社会の課題解決に大きな役割を果たしてきた。こうした地縁的団体などのコミュニティの再生を含め、共に支える共助型の社会が求められている。今後、少子高齢化・人口減少社会が進展していく中、地域社会に暮らす住民の身近な様々な問題の解決に向け、住民と行政の「協働」が一層必要とされてくるだろう。
こうしたことを踏まえ、これからの地方自治にあっては、権限と財源を備え、高い政策形成能力をもった自治体行政、民意を的確に反映し熟議によって政策を磨き上げる自治体議会、そして、参加と協働によって自助・共助を担う自治体住民、これらによる「協働型自治体経営」が、求められているのである。
※掲載内容は2014年8月時点の情報です。
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