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課題は地域にあり ―求められる自治体議会の改革と住民・行政の「協働」―

牛山 久仁彦 牛山 久仁彦 明治大学 政治経済学部 教授

自治体のシステムは二元代表制

 政策形成能力という視点から、私が指摘したいことの一つに自治体議会の問題がある。行政サイドの分権化は進みつつあるが、その一方で自治体議会の改革は行政の分権化ほどには進んでいないと思われるからだ。そして、改めて確認しておきたいのが、自治体の仕組みは国と異なっていることである。地方自治体は、議決機関である議会と自治体の首長が、直接住民の選挙で選ばれ、首長と議会それぞれが住民を代表し、住民に対して責任を負う二元代表制のシステムを採用している。いわゆる、大統領制に近い制度である。したがって首長と議会は、もともと民意代表機関としてお互いに対立・競争する関係にある(機関対立型)。議院内閣制を採用する国の場合、国会と内閣の間には与野党関係が形成され、与党は内閣と協調的な関係を持ち(機関協調型)、野党は内閣に批判的な立場に立つという構図になる。そして、国と異なり、首長と議会が対立・競争する関係にあるのが、自治体の政治システムであることを十分認識する必要がある。しかし現状は、自治体のリーダーシップは首長に独占されているところが多く、議会は相変わらず行政の承認機関的存在に甘んじているという感をぬぐえない。

自治体議会の機能と役割

 そこで、自治体議会の機能は何かということが問われてくる。その一つは大きな権限を持つ首長に対して、その政策決定・実施を監視、チェックする機能だろう。日本の自治体政治はアメリカの大統領制とは異なり、首長に予算案や条例案の提出権、不信任案に対抗する議会の解散権など、自らの政策実現のための積極的な権限が与えられており、結果として首長の権限は強くなっている。大胆な施策や発言によってマスコミを賑わせる強い首長が登場するのも、そうした制度や地方分権による権限拡大があるからだ。首長の権限が大きいことには良い面も悪い面もあるが、いずれにせよ、首長の独走を歯止めする抑止力としての機能、役割を議会が担わなければ、民主的統制が効かなくなる。
さらに議会に求められるのが、先にのべた政策形成能力である。以前、ある県議会が34年ぶりに議員立法を行ったことが話題になったが、そのことに象徴されるように、これまで多くの自治体議会は、政策形成や自治立法に積極的な姿勢を示してこなかったといえる。だがここにきて、条例・法令策定をはじめ、政策形成に取り組む自治体議会が増えてきているのも事実である。地域の課題を地域で解決するための政策を、首長と議会が、対等な立場で熟議し磨き上げていくことが二元代表制の本来の姿であろう。自治体議会の復権が地方分権が成功するかどうかの鍵を握っているといえよう。

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