ジェンダーステレオタイプやジェンダー格差にどう向き合うか
最後に格差の改善のためにどうすればよいのか、ということなのですが、格差の維持に関わるメカニズムを知るということは重要だと思います。
慈悲的ステレオタイプの機能を知っていれば、肯定的な内容だからと受容する人は少なくなるでしょうし、子育て支援政策への支持を集めたい時に、「子を持って幸せな親像」がつくられるのを防ぐにはどうすればよいか、という問いを立てることもできます。
多元的無知で旧来の性役割と異なる行動が取りづらいのであれば、正確な統計結果の公表やロールモデルの提示で改善できる部分もあるかもしれません。科学的なジェンダー教育はやはり必要だと思います。
大事なのは、「ジェンダーステレオタイプを自覚しよう」、「個人個人が差別しないように気をつけよう」という個人的で心理主義的な対策に陥らないことです。
そのような対策は、要はセルフコントロールを求めているわけですが、セルフコントロールというのは結構エネルギーを使うもので、エネルギーが枯渇すれば失敗してしまいます。
そもそも、ステレオタイプというものはエネルギーを節約して判断する方略の1つでもあります。エネルギーに限界があって、しかも、さまざまなことを判断しないといけない情報過多な現代環境で暮らしている個人に対策を委ねるというのはだいぶ無理な話です。
例えば、職場でジェンダー差別を防ぐのであれば、部署やチームでその目標を共有してチェックする体制を作るというような方法のほうが効果的なのではないか、と思います。
※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。