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和食のススメ ―加工食品が持つ有害性の恐怖―

明治大学 農学部 教授 長田 恭一

ポリフェノールの抗酸化作用

 「酸化脂質」に加えて、私のもう一つの研究対象が「ポリフェノール」である。ポリフェノールは、植物の光合成によって生成される植物の苦みや渋み、色素の成分となる化合物で自然界には多種多様なポリフェノールが存在している。共通して見られる効果に「抗酸化作用」がある。人間の体に存在している活性酸素は外から侵入してきた細菌やウイルスを撃退する役割を持つが、様々な要因で必要以上に増加すると、老化や生活習慣病、がんなどの原因になるといわれている。ポリフェノールが持つ抗酸化作用は活性酸素の活性を減じる作用を持つため、様々な病気に対抗する力やアンチエイジング効果などが期待されている。
ポリフェノールが多く含まれる代表的な植物に、お茶、イチゴやブルーベリー、ブドウ、大豆、柑橘類などがあるが、赤ワインにポリフェノールが含まれていることよく知られていることだろう。昔から、赤ワインのポリフェノールには心疾患の発症を抑える働きがあるのではないかと指摘されてきた。フランス人は活性酸素を発生させやすい高脂肪食品(バター、チーズ、フォアグラなど)を他国の人々より多く摂取しているにも関わらず、心疾患の発症率が他国に比べて相対的に低いのがその根拠である。反論する学者も少なくないが、その現象は世界保健機関(WHO)などによって「フレンチパラドックス」と呼ばれ、1990年代初頭世界的に広まり、日本では赤ワインブームのきっかけともなった。

リンゴポリフェノールのパワー

 私が注目し研究を続けているのが、プロシアニジンを主成分とするリンゴのポリフェノールである。リンゴの栽培は真ん中の果実(中心果)だけ残し、周りの果実(側果)をすべて摘み取って行われるが、この廃棄される側果には、中心果の10~20倍の高濃度のポリフェノールが含まれていることがわかった。リンゴのポリフェノールは通常でも目にすることができる。リンゴをカットすると切り口が茶色に変色するのは、ポリフェノールが酸素に触れたことによって起こるものだ。側果になると、カットした直後から黒色に変色する現象が見られるが、それだけポリフェノールが高濃度であることの証である。
この側果からポリフェノールを抽出し、実験研究を重ねた結果、リンゴポリフェノールには、脂肪の吸収を抑えるバリアの役割や脂肪の合成を阻害する働きがあり、血中の中性脂肪値の上昇抑制や血管への脂肪の蓄積を抑制することが確認されている。このことから、肥満防止や動脈硬化防止への効果が期待できる。さらに、ラットにコレステロール酸化物とリンゴポリフェノールを同時に摂取させたところ、コレステロール酸化物の摂取によって誘発される有害作用が緩和されることも明らかになってきた。今後も、リンゴポリフェノールが持つ未知の可能性を追究していきたいと考えている。

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