2024.03.21
企業に囲い込まれる消費者から、選択する消費者へ
宮田 憲一 明治大学 経営学部 准教授新たな企業成長を促すのは私たち消費者
21世紀に入ってから、アメリカでは、かつては栄華を誇ったモダン企業が衰退し、GAFAMやビッグ・テックと呼ばれるネオ・モダン企業が急成長を遂げました。
一方、日本では、まだモダン的な企業が大企業として残っていますが、このままでは、さらに成長していくのは難しい状況です。そこで、日本の大企業の中にも、ネオ・モダン的な戦略に向かうところが出始めています。
しかし、一方で、EUなどでは、ネオ・モダン的な戦略に対して規制をかける動きが強まっています。例えば、デジタル課税や、個人情報保護の強化などです。
日本もこうした動きに追随していくことが考えられます。そうなると、ネオ・モダン的な戦略は、いまのGAFAMなどがピークになるかもしれません。
GAFAMが、かつての大企業が行き詰まり始めたときに、従来にはない発想の戦略で一気に成長したように、今後、彼らにはない発想で急成長する企業が現れる可能性もあります。
例えば、世界中の製品が均質化してきたいまだからこそ、ものづくりに徹して、他にはない独自性のある製品を作ることも、発想のひとつだと思います。
非常に身近な例として「柿の種」があります。日本の米菓のひとつである柿の種は多くの企業で作られていますが、各社で味が少しずつ違います。でも、その少しの味の違いによって、人気は大きく違います。
日本で人気の高い柿の種は、実は、世界でも人気があり、いま、インドなどで売り上げを大きく伸ばしています。
このような、日本でしか作られないもの、日本でしか出せない特徴をもったものづくりも、これからの企業成長のヒントになるのではないかと思っています。
私たち消費者も、製品やサービスの違いに関心を払っていくことは大切になっていくと思います。
例えば、スマートフォンのOSでは、セキュリティや個人情報保護の強化を重視し、その実施を公表している企業があります。
もちろん、人によっては個人情報の保護よりも、利便性を重視する人もいるかもしれません。でも、大切なのは、いまのことだけでなく、様々な観点からも考慮して、自らしっかり選択することです。
例えば、社会のIT化はこれからもますます進展するでしょう。それは、私たちの生活をより便利に、快適にしてくれるはずです。
一方で、デジタル社会は情報流失のリスクを常に抱えます。そのリスクを軽視せず、リスク対策をとっておくことも重要なのです。
いま良いことが、10年後、20年後も良いことであるかはわかりませんし、逆に、いま良いことが10年後にあだとなることもあるかもしれません。
だからこそ、私たち自身が選択の目を養っていくことは重要です。また、そうした消費者の選択眼や行動によって、企業も提供する製品やサービスを考えていくのです。
その意味では、未来の企業成長の鍵を握っているのは、私たち消費者なのです。
※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。