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コロナ禍をきっかけに見えてきた「ひとり空間」の新たなかたち

南後 由和 南後 由和 明治大学 情報コミュニケーション学部 准教授

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コロナ禍で「おひとりさま」商品が増え、注目されていますが、実は、日本の都市における「ひとり空間」は、コロナ以前から数多く見られました。人は人との接続と切断という相矛盾することを求めるため、その切り替えを自由に行うことができる空間が重要なのです。

都市と「ひとり空間」の関係

南後 由和 「ひとり空間」とは、何らかの仕切りによって、「状態としてのひとり」が保たれた空間を指します。

 何らかの仕切りとは、住宅の壁や扉、飲食店の衝立など、物理的で「目に見える仕切り」の場合もありますし、スマホや古くはウォークマンなど、モバイルメディアによって立ち上げられる「目に見えない仕切り」の場合もあります。

 「状態としてのひとり」とは、通勤・通学途中やトイレの中など、一時的に家族や同僚などの帰属集団から離脱して、匿名的な存在になることを指します。いわゆる「おひとりさま」や単身者も含まれますが、それらに限られません。

 一方、「おひとりさま」という言葉は、晩婚・非婚化や高齢化を背景として増えた単身者を主に指し、それら単身者をターゲットとしたマーケティング用語という性格を持っています。

 近年は、「おひとりさま」を対象とした商品やサービスが増加しています。例えば、従来は一人客を敬遠していた旅館やレストランなども、「おひとりさま」向けのプランやメニューを設定するようになっています。

 従来、単身者はマイノリティで、どちらかといえばネガティブな存在と受け取られがちでした。しかし、日本の単独世帯は年々増加し、2010年の国勢調査で、もっとも多い家族類型となったことが明らかになりました。単身者はマジョリティとなっているのです。

 「おひとりさま」には、「さま(様)」という言葉を付けることで、そのようなマジョリティとなった単身者として生きることをポジティブに捉えようとする意味合いがあります。

 ただし、そもそも都市とは、進学や就職をはじめ、国内外から単身者が多く集まる場です。このことは日本に限ったことではありません。その一方で、日本の都市には、「ひとり空間」の種類や数が多いこともたしかです。

 例えば、1979年に誕生したカプセルホテルは、日本の発明品です。同じ年に、ウォークマンも発売されました。その後のマンガ喫茶やネットカフェなども、カプセルホテルから派生したものと言えます。

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