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違憲判決を社会に活かすために必要なのは

辻 雄一郎 辻 雄一郎 明治大学 法学部 准教授

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近年、裁判所が違憲判決を下す例が増えてきました。つまり、訴訟になっている事案に適用される法律などが憲法に違反しているということですが、それは、なぜなのか。また、そうした判決を聞いたとき、私たち市民は、どのように考え、どのような行動を起こしたら良いのでしょう。

違憲判決が下される意味

辻 雄一郎 私たちには、社会生活をおくる上で、私たち自身の行動をコントロールしたり、互いの利害を調整したりするための、いわば道具があります。

 例えば、道徳とか宗教がそうですし、個人の価値観や人生観、社会観もそうです。そして、法律も、その道具のひとつです。

 法律は、社会を支える絶対的な基盤やルールであると思われがちですが、実は、決してそうではありません。

 例えば、価値観や人生観が人によって違うように、道徳や宗教が時代によって変わったり、違う解釈をされたりするように、法律も、人々の意識や社会の変化に応じて変わるものです。

 いわば、時代遅れになった法律は変えなくてはならないかもしれません。法律は、社会を支えていますが、社会に支えられてもいるのです。

 その法律が時代遅れになっていることを指摘する機関のひとつが、裁判所です。裁判所が扱うのは人々の争い、紛争ですが、その紛争に関する判断を通して、適用する法律を解釈し、その意味を発見する使命を担っているからです。

 ですから、判決文は、その裁判の当事者はもちろん、私たち市民に対しても、その法律の意味を示したものとなるわけです。

 では、裁判官は法律をどのように解釈し、どのように意味を発見するのか。すなわち、審理は当事者たちの証言や意見、証拠を基に進むのですが、そこには、いまの社会に生きる私たちの意識や法律を支える社会が反映されているわけです。

 すると、そこに適用する法律が社会に適応していないのではないか、という判断が生じることがあります。つまり、法律が時代遅れであるということです。そのとき、その法律は、憲法に照らし合わせて判断がなされることになります。

 著名な例として、いわゆる尊属殺人罪があります。

 尊属とは、自分や配偶者の父と母のことです。すなわち、子が親を殺すと尊属殺人罪となり、その他の殺人より罪が重く、死刑か無期懲役に処せられるという規定が刑法の200条にありました。そこには、子は親を大事にしなくてはいけない、という意味があるわけです。

 ところが、1968年に、29歳の女性が実父を殺害する事件が起こります。当然、尊属殺人罪が適用されますが、審理の過程で、この女性は、子どもの頃から長期間にわたって父親にレイプされ続けていたことがわかったのです。

 すると、この女性には斟酌すべき状況があるにもかかわらず、死刑か無期懲役に処せられるのは酷すぎるのではないか、と多くの人々が感じたのです。結果、最高裁は、1973年に、尊属殺人罪は憲法14条による法の下の平等に反していて違憲である、という判決を下したのです。

 このように、社会に暮らす人々の意識や価値観、倫理観などは時代によって変わっていき、法律もまた、それに応じて変わっていくことで、社会を支えていくことができるわけです。

 法律に対して、そうした意味づけをする機関のひとつが裁判所であり、それは、違憲判決という形で示されることになります。

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