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「権利」、「法」、「自由」について、私たちは誤解していないか

森際 康友 森際 康友 明治大学 法学部 特任教授(2021年3月退任)

自由とは正義と自己制御によって実現する

 国民に共通の利益である自由権は侵害されないもの、正当に守られてよいものと述べましたが、では、自由とは、やりたい放題が認められるということなのでしょうか。

 よく言われるのが、人に迷惑をかけない限りはなにをしてもいい、ということです。しかし、それも考え違いです。

 まず、人が自由を侵害されたと思うのはどのようなときでしょうか。自ら目指した生き方が故なく阻害されたり、認められ尊重されないときでしょう。

 例えば、様々なハラスメントがそうです。そのときは、それが不当な抑圧、自由権の侵害であることを裁判を使って主張し、自分の権利を守るために、国家に権利の敵を取り除かせることができます。つまり、自分の権利を外敵から守ることによって正義を実現させるのです。

 一方、自由にはこうした外の敵だけでなく、自分の中に、いわば内なる敵もいます。こういう生き方をしたいと思っても、怠慢や横着な心がそれを阻害することがあるからです。

 楽をしたいとか、休みたいと思う気持ちを抑えるには、克己心が必要です。つまり、やりたい放題とは正反対の自己制御が自分の自由を守るのです。

 これは直観に反します。自己制御などない生き方をするのが自由ではないのか、と。でも、欲望のままに行動するようなことを目標にする人が、本当にいるでしょうか。

 例えば、自己制御を取り除くために麻薬に頼る人を自由と思うでしょうか。むしろ、麻薬に支配されていると思うのではないでしょうか。つまり、それは自由とは正反対です。

 要は、自分が目指す生き方を全うするのが自由であり、その生き方とは自分にとって最善の価値をめざすものであるはずです。自分の生き方を守るには、克己しつつ権利を駆使して外敵を退けねばなりません。それが自由であり、その自由への権利を守ることが正義である、ということなのです。

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