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なにを得るために個人の情報をやり取りするのか?

福田 康典 福田 康典 明治大学 商学部 教授

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新型コロナウイルス対策のために、個人情報を積極的に活用する動きが各国で起こりました。日本でも個人の位置情報を活用するシステムが導入されましたが、個人情報の利活用にあたってのルールづくりはあまり進んでいないようです。私たち市民も、そうした議論を考えなくてはいけない時期にきています。

ぼんやりした形で論じられている個人情報の問題がある

福田 康典 2020年のコロナ禍だけでなく、過去にも、社会的な危機が迫ると個人の行動を監視する動きが活発になることはよくありました。アメリカの同時多発テロのときもそうでしたし、ヨーロッパの多くの都市でも頻発したテロ対策のために街頭の防犯カメラが増設されました。

 このような場合、社会的な正義や利益と個人のもつ権利とが正面衝突するような議論が盛んになされます。

 一方で、現代社会では、個人に関わる情報について、こうした明確な対立構図ではなく、もっとぼんやりした形で論じられている問題があります。

 例えば、デジタル機器などで使われるソフトやアプリ、インターネット上の各種サービスを利用しようとすると、多くの場合、それらを提供している企業に使用履歴などの情報が収集され利用されています。

 もちろん、プライバシーポリシーなどにおいて、情報収集が行われることや収集した情報の使い方などはあらかじめ開示されているわけですから、そうしたことが嫌であれば、そのポリシーに同意しなければよいということになります。

 しかし、一般的に、プライバシーポリシーは利用許諾の契約の中に組み込まれているので、製品やサービスを利用するためには、自分の情報が収集され、使用されることに同意しなければならないようになっているのです。

 そのことがなんとなくわかっている現代人の多くは、もはやプライバシーポリシーを読んだり気にしたりすることもなくなってきています。つまり、自分の情報が収集され使用されていることを感じつつも、それが便利な世の中で暮らしていくためには致し方ないことであるため、そうしたことを明確に理解しようとわざわざ努力したりはしないのです。

 実際、学生たちによく利用するアプリの情報収集状況を調べさせると、「自分の情報が集められているということはなんとなくわかっていたが、具体的に知るとちょっと気持ち悪い」という感想をもちます。

 しかし、だからといって、その製品やサービスの使用を止めるのかというと、そのような学生はひとりもいません。要は、SNSなどの便利なサービスを利用することは自分の生活スタイルの中にすでに根深く入り込んでいて、それに関連する情報のやり取りに多少の不安や不満があったとしても、これを止めたり変えたりすることは難しいのです。どうせ変えられないのであれば、ぼんやりとしたままにしておくというのも合理的な選択になるわけですね。

 企業は、長らく、利用者の情報を集める手段としてアンケート調査を用いてきました。その場合、利用者側からすると、アンケートに答えなくても製品を使うことはできるので、情報提供に応じるか否かは利用者側が決定することができます。

 しかし、先に述べたように、いまでは、製品やサービスを利用したければ、それに関連してなされる情報の収集や使用に同意せざるを得ない仕組みが採用されるようになってきています。

 最近では、日常の生活シーンで利用する多くのもののIoT化が進んできていますから、こうした仕組みはますます広がっていくと思います。

 こうした仕組みでは、自分の情報を提供することに不安や不満を持ちつつも製品やサービスを利用するために仕方なく同意しているという意味での不本意さが生じやすくなります。

 そして、多くの人は、便利な機能が使えるならばしょうがないとか、情報を提供しているのは自分だけではないとか、これまで提供してきたけど何か問題を感じたことはないなどといった理由をつけながら、この不本意さにぼんやりと折り合いをつけている心理状況にあると言えます。

 しかし、こうした折り合いが崩れ、明らかな不快感が表出してくることがあります。それは、なぜなのでしょう。

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