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脱炭素社会に舵を切った私たちの新しい生活

辻 昌美 辻 昌美 明治大学 専門職大学院 ガバナンス研究科 特任教授

経済・社会的課題の同時解決を目指す第5次環境基本計画

 日本には、環境分野のおおもとになる法律として、環境基本法があります。この法律に基づいて策定されるのが環境基本計画です。

 この第5次環境基本計画のポイントとなるのが、「経済社会システム」、「ライフスタイル」、「技術」の3分野を中心にあらゆる観点からイノベーションを創出し、SDGsの考え方も活用し、経済・社会的課題の同時解決を図ることを目指していることです。

 つまり、地球温暖化を環境分野の問題と捉え、その専門家が尽力するという従来の考え方から、私たちを取りまくあらゆる分野全体の課題として同時解決を図っていくということ。あるいは、同時解決を図っていかなければ、脱炭素社会は実現できない、ということです。

 例えば、経済社会システムとは社会自体の活動や仕組みのことです。そこには企業などの経済活動もあれば、国や地方公共団体がつくる政策や施策などの枠組みづくりもあります。

 ライフスタイルとは、まさに私たちひとりひとりの生活や暮らし方のことです。

 経済社会システムがライフスタイルに関する課題の解決を図ることもあれば、私たち生活者ひとりひとりのニーズや要望が経済社会システムの課題となり、それに応えるために経済社会システムが変わっていくこともあります。

 例えば、レジ袋の有料化は、プラスチックごみを削減するという課題のための施策であり、それに則って私たちのライフスタイルも変わっていきます。

 しかし、レジ袋をぶら下げて歩くのはどうもカッコ悪い、エコ意識が低い人と見なされそう、という私たちの感覚が少しずつ社会に醸成され、それがレジ袋の有料化という施策に繋がった、という面もあります。

 つまり、どちらが鶏か卵か、ということではなく、経済社会システムとライフスタイルの改善という相乗効果をはかることで、地球環境問題への取り組みという、とても大きな枠組みの一環に繋がっていく、ということなのです。

 さらに、技術は重要な分野です。第5次環境基本計画の中でも、「今後の環境政策が果たすべき役割は、既存の財・サービスの継続的改善といったイノベーションから従来の技術や制度の延長線上には存在しないイノベーションまで」あらゆる観点からのイノベーションを創出していくことが必要であると、明記されています。

 すなわち、既存の技術を改善していくことのみならず、いまの技術の先にある新しい技術を開発していくことが重要であるということです。

 その技術開発とは、経済社会システムはもちろん、私たちのライフスタイルを変えていくイノベーションであるということです。

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