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2020.09.23

コロナ禍を都市政策の歴史的な転換点に

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空き家の活用は一筋縄ではいかない

 日本は、人口減少社会にあって、空き家が右肩上がりに増加しているにもかかわらず、都市部では超高層マンションが林立し、郊外部や地方都市の農地エリアでは無秩序に戸建て住宅地の開発が続いています。

 私は、こうした状況を「住宅過剰社会」と呼んでいるのですが、2023年頃から、日本では人口だけでなく世帯数も減少に転じます。これは、近い将来、住宅需要の低下が避けられないということを意味しており、新たに住宅を「つくる」のではなく、住宅を「使う」「たたむ」ことに軸足を置くべき時期にきています。

 「住宅過剰社会」の中で、郊外がベッドタウンからの脱却を図ることは、職住近接のニーズに応えるだけでなく、実は、いま、日本社会が直面している人口減少や空き家問題を解決していくことにも繋がるのです。

 では、増え続けている空き家や郊外のベッドタウンにある空き家を活用して、シェアオフィス、サテライトオフィス、子供や高齢者のための支援施設や居場所づくり、店舗など他の用途にリノベーションすればよいのではないかと思われる方も多いでしょう。

 しかし、空き家の活用は、現実的には非常に難しいのが実情なのです。

 そもそも空き家は、相続が発生したときに、相続人がいつか何とかしないとと思いながらも、実家の遺品整理や心の整理がつかない、相続人間で意見がまとまらないなどで、とりあえず空き家のまま置いておこうという問題の先送りから始まっています。

 誰かが空き家を買いたい・借りたいと思っても、相続が発生する前のかなり昔の登記簿のままだったり、地元を離れて住む相続人の連絡先を誰も知らないなどで、そもそも、空き家の所有者に連絡をとることが難しく、交渉のテーブルにすらつけないことも多いのです。

 そして、とりあえず置いておいた空き家は、5年、10年、20年、放置状態になると、家も朽ちてきて、売ることも貸すことも難しくなっていきます。相続人が高齢になると、体力や気力が低下し、維持管理も難しくなり、年金暮らしになると、解体費用の負担感も増して、結果、更に問題を先送りされることが多いのです。

 さらに、相続した人も亡くなると、相続権が家族や親戚へと移り、多くの相続権者の共有状態になることもあります。

 すると、その空き家を買いたいという人が現れたとしても、相続権者全員から合意を得なければならず、そのような手間やコストはかけていられないということになるのです。

 いま、こうした空き家問題が、日本各地で起こっています。地方や郊外だけでなく、実は、東京23区内も例外ではありません。

 このように、空き家はたくさんあっても、実際に活用するとなると、一筋縄ではいかないのが現状なのです。

 しかし、こうした現状を放置すると、点としてではなく、面としての空き家問題へと悪化していくことが懸念されます。同じエリアで空き家化が相次ぐと、エリア全体の価値低下や新規の人口流入を阻み、その結果、空き家の所有者やいずれ相続することになる家族・親戚が空き家の処分に苦しむ事態となります。

 実際に、大都市郊外の住宅地では、とりあえず置いておこうという所有者の続出で空き家だらけとなり、エリア全体の価値が低下し、たとえ公費で解体できたとしても、跡地活用の選択肢が見出せず、お手上げのエリアが出現し始めています。

※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

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