お金を学ぶことは世界を広げ、自分自身を考えるきっかけになる
私は、「お金とは、あらゆるものの価値を数値化する仕組みである」と考えています。
例えば、新しい企業が赤字続きなのに、株価が高いことがあります。それは、人々が、その企業に新たな時代を拓く可能性を期待し、そこに価値を見出しているからです。
その期待感や、価値を言葉で説明するのは大変ですが、それを株価は数値で表してくれるのです。
すると、これらの数字はコミュニケーションのひとつの手段である、ともいえます。「あの企業は注目だ」「先が楽しみだね」「社会を変えるかもしれない」という無言の会話がそこにあり、その声が聞こえてくるのです。
しかも数字は言語の壁を容易に乗り越えます。なので、金融の知識を身につけることは、日本人が英語を習得し読み書き会話ができるようになると、飛躍的に情報量が増えて世界が一気に広がったと感じることと同じような感覚が得られます。
私は、誰もが資産運用をしなくてはいけない、とは思っていません。大切なのは、資産運用というものをきちんと考えてみること。きちんと考えるというのは、自分に与えられた選択肢を比べてみて、その中から、一番「現実的」な方法がないかを考えることです。理想の選択肢を待っていたら、機会を逃す可能性もあるからです。その上で、自分には資産運用が必要ないと思う人は、無理にやらなくても良いと思います。
でも、今回述べたことに関心をもった方は、ぜひ、自分に合ったペースで少しずつ体験することをお勧めします。
まったく知識がないという方でも、まずは、知るぽると(金融広報中央委員会)や金融の各協会のホームページを見れば、初心者向けの資料などが用意されています。セミナーを催していることもあります。小学生にわかるような説明もありますが、情報は「生もの(新しくないと意味がない)」と言われる金融業界の一次データが集約されているところなので、お勧めです。
最低限の知識が身についたら、職場が資産形成の仕組みを提供していないか、調べてみましょう。福利厚生の観点から、従業員にお得な仕組みになっていることが少なくないからです。また近年は、初心者でも始めやすいNISAやiDeCoといった仕組みがあります。まずはそこから始めるのが良いでしょう。
知識が増えれば、自分のライフプランに応じて、そのままNISAやiDeCoなどを続けても良いし、あるいは、金融のプロのアドバイスなどを受けて、ひとつ上のレベルの投資に挑戦することもできます。
でも、どんなに優秀な金融のプロでも、あなたの目的、志向まではわかりません。それを自分の中ではっきりさせること。すなわち、なんのための資産運用なのか、自分自身でプランを立て、どのようなペースで進めたいのか、どこまでのリスクなら取ってもいいのか、きちんと説明できるようになることが大切です。
老後の生活資金のためか、5年後の独立のための資金のためか、それによって、資産運用はまったく変わります。資産運用とは、自分仕様に設計するものなのです。
これができるようになれば、お金は皆さんが思い通りの人生を送る一助になります。日本でもこのように、自らの選択肢をより広げていける社会になるよう、是非、お金には関心を持ち続けて欲しいです。
※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。