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人から、メタボやアレルギー性疾患がなくなる!?

明治大学 農学部 准教授 石丸 喜朗

不要な細胞はひとつもないからこそ、慎重な研究が必要

石丸 喜朗 私は、もともと味覚に関する研究を行っていました。人の舌には味蕾という組織があり、ひとつの味蕾に約50~100個の細胞があります。

 味には、甘味、うま味、苦味、塩味、酸味の5基本味がありますが、味蕾の細胞1個が特定の味の受容センサーになっています。甘味を受け取る細胞は甘味だけを受け取り、そのほかの味は受け取らないという仕組みです。

 では、そもそも人は、なぜ、味を感じる必要があるのでしょう。食物の味を感じて、美味しいと思ったり、不味いと思うのはどういうことなのでしょう。

 例えば、人は、基本的に血中のNaCl(塩化ナトリウム)の濃度より薄いものを美味しいと感じ、濃いものは嫌がります。つまり、本来は、塩味の強いものは避けるのです。それは、血中の濃度を保つためです。だから、運動などをして塩分が失われると、今度は、濃度の濃い塩味でも美味しいと感じるようになります。

 つまり、人は味という形で、いま身体に必要なもの、不必要なものを識別しているわけです。それが、人が味を感じる理由のひとつです。

 だから、人以外の生き物にも味覚がありますが、生き物が必要とする成分を得るために、その味覚は生き物によって異なります。

 例えば、人は甘味を炭水化物によって感じますが、魚は甘味を感じません。人はうま味を、アミノ酸のひとつであるグルタミン酸に特化して感じますが、ネズミは1種類のアミノ酸だけではなく、20種類のアミノ酸をうま味として感じます。

 つまり、それぞれの生き物にとって、味は、必要な成分のシグナルになっているのです。だから、逆に、人が苦味を感じるのは、それが毒の味であり、酸味は腐敗の味であり、それらを食べないようにするために感じるのです。

 しかし、人は、苦味も酸味も美味しさの要素として扱う知恵をつけてきました。一方で、そうした知恵のために、身体に必要な味を必要な分だけ摂るという、身体本来の機能が阻害されているのかもしれません。

 こうした研究を行っていた私が刷子細胞に関心をもったのは、味蕾の細胞の転写因子が欠損すると、甘味、苦味、うま味、それぞれの受容センサーである細胞が、その味を受け取らなくなり、酸味の受容センサーに変わってしまうことを知ったときです。その転写因子とは、欠損すると刷子細胞も消失させるSkn-1aだったのです。

 私は、最終的には人を知りたいという思いで研究を続けています。それは、人の身体の37兆個とも言われる細胞の複雑な因果関係によって成り立っていることを解明していくことでもあります。

 37兆個の細胞のうち、不要なものはひとつもありません。Skn-1aを欠損させれば刷子細胞が消失し、メタボ対策やダイエットにもなるという単純なことではなく、それは免疫や味覚の機能にも関係してくること。あるいは、さらになんらかの機能にも繋がっているかもしれないことを解明しながら、その研究を、肥満や糖尿病、アレルギー性疾患の予防や治療法の開発に繋げていきたいと考えています。

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※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

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