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流行語大賞選びでわかる、日本語のしたたかな柔軟さ

小野 正弘 小野 正弘 明治大学 文学部 教授

毎年、年末になると、今年の流行語や新語、漢字が選ばれ、それに人々が注目し、話題になります。その言葉を見ていくと、その1年が振り返られるだけでなく、実は、日本語のもつ特性が見えてくるといいます。

重い出来事も軽妙に表現する流行語

小野 正弘 年末になると、「ユーキャン新語・流行語大賞」がマスコミなどで盛んに取り上げられ、多くの人が興味や関心をもつようになっています。その選考基準は「軽妙に世相をついた表現とニュアンス」とされていますが、確かに、選ばれた言葉を見ると「軽妙さ」を感じます。

 2018年の大賞は「そだねー」でした。例えば、日常の会話の中で、「これ、美味しいね」と言ったとき、「そうだね」と答えられるより、あの独特のアクセントで「そだねー」と言われると、言った方も言われた方も、あの言葉を使ったね、という感じで互いにニヤリとしたりします。「そだねー」に絶妙の軽さがあり、それによってコミュニケーションが円滑になるのです。

 このことは、人々が軽妙な出来事を求めている、ということではないだろうと思います。

 例えば、トップ10の中に「ご飯論法」があります。その意味するところは、ごまかし行為に対する批判です。しかも、国会での答弁に対するものなので、非常に重い意味合いであるといえます。

 しかし、「ご飯」という、食事を表す言葉の中でも卑近な表現に、「論法」という、ちょっと堅苦しい言葉を結びつけたことで、ある種の「軽さ」が生まれているのだと思います。

 例えば、「お前、それはイカサマだろ」と言うと、問い詰めているようなきつい表現になり、言った方も言われた方も殺気立つような感じになりますが、「また、ご飯論法を使ってぇ」などと言うと、言われた方は厳しく批判された感じがせず、「大目に見てよ。次はしっかりやるから」とでもいう会話になりそうです。

 つまり、重い出来事に対して厳しく批判するのではなく、それを軽妙な表現にして、コミュニケーションを円滑にする、そんな軽さが「ご飯論法」にはあるといえます。

 実は、「そだねー」を言い合ったカーリングの選手たちも、日本代表という重責の中でプレーしています。それでも、深刻になりすぎることなく、明るくポジティブにプレーできるように軽妙な表現を使った気持ちが、見ている私たちにも伝わったということなのかもしれません。

 そうした観点で見ていくと、「ユーキャン新語・流行語大賞」のトップ10に選ばれた言葉は、重い出来事や、きつく批判したいところを、ある種の軽妙さというオブラートで上手く包んだ表現であるものが多いことがわかります。いまの世相は、まさにそういった言葉、表現を求めているのだということを感じます。

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