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SDGs時代のお墓のあり方とは?

菅野 博貢 菅野 博貢 明治大学 農学部 准教授

日本では、大都市への人口の集中と地方の過疎化が様々な分野で大きな問題となってきました。今後さらに少子高齢化と多死社会が進行することで、大都市ではお墓の取得が難しくなる一方、地方では無縁墓が急増するなど、お墓の問題が緊急の課題となってきます。いま、あらためてお墓のあり方を考える必要があります。

いまのお墓のスタイルが広まったのは戦後のこと

菅野 博貢 いま、日本は多死社会にあるといわれています。2019年の推定年間死亡者数は、およそ138万人。2040年には168万人に迫るといわれています。それに対して2019年の出生数は過去最小の86万5千人で、さらに下降傾向にあるのですから、これから日本社会はどうなっていくのか、恐ろしい気がします。

 こうした人口構成の変化は様々な問題を起こしていますが、お墓の問題は、多死と直結した身近な問題だけに喫緊の課題といえます。

 まず、人口が集中する東京ではお墓の取得が非常に難しくなっています。四角い墓石を積み上げる一般的なお墓は費用が高く、しかも、少子化で代々継承されるのかも不安です。そのため、費用が抑えられる簡素なスタイルの樹木葬などが人気になっていますが、倍率が20~30倍になる霊園も珍しくありません。

 いま、こうした問題が浮き彫りになってきた背景には、日本のお墓のあり方が硬直し、多様性がなかったことがあります。

 そもそも、四角い墓石を積み上げたお墓が日本の伝統的なお墓のスタイルだと思われていますが、実は、このスタイルが一般に広まり始めたのは戦後であり、本当に普及したのは、ここ40~50年のことです。

 もちろん、江戸時代の初めころから代々のお墓を継いできた家もありますが、それは富裕層など、限られた家です。

 庶民は檀家制度によってお寺に戸籍を管理されていましたが、死後お墓を建てられる人は少なく、実は、亡骸は谷間などに捨てられることも多かったようです。実際、堆積した江戸時代の人骨が発掘される場所が都内にあります。

 それが、明治以降、庶民もだんだん豊かになると、富裕層を真似てお墓をつくるようになったのです。そして、戦後、高度経済成長期を迎え、社会全体が豊かになるにつれ、墓石を建てるようになっていったのです。

 あたかも古来からの伝統のように、このお墓のスタイルが日本中に広まりましたが、実は、それと同じころから、日本の女性の合計特殊出生率は、人口維持に必要といわれる2.08を下回り始めていました。つまり、少子化です。

 すると、継承されることを前提としたスタイルのお墓は行き詰まってしまいます。しかし、立派なお墓を建てることが当たり前になった日本社会は、それを顧みたり、別のスタイルを考えることをしてこなかったのです。

 その結果、人口が集中する大都市では墓地の土地がなくなったり、あるいは継承者がいなくなった無縁墓が増え、その墓石は撤去されて人目につかない山中や海岸に大量に不法投棄される問題になっています。

 ここ数年で、散骨や樹木葬、ビル墓など、ようやく様々な弔いのあり方やお墓のあり方が広がり始め、多様性が出てきました。終活ブームといわれ、どのようなお墓のスタイルにするか、決めておく人も多いといいます。

 しかし、それらのスタイルに慌てて飛びついて良いものかと、私は思っています。日本のお墓のあり方を一から再編するような、抜本的な取り組みが必要だと考えるからです。そのヒントとなるような墓地のスタイルが、ヨーロッパにあります。

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