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SDGs時代のお墓のあり方とは?

菅野 博貢 菅野 博貢 明治大学 農学部 准教授

お墓に関する知識を増やすことが終活のポイント

菅野 博貢 もともと土葬が中心だったヨーロッパでは、火葬になってからも骨上げのような習慣はなく、遺骨はほとんど遺灰にします。

 そのため、散骨や自然に還るようにすることが多く、お墓に遺骨が埋められていることは少ないため、多様なお墓のスタイルができやすく、循環利用のシステムなども取り入れやすかったのだろうと思います。

 日本でも、散骨や自然に還るスタイルが広まっていますが、ひとつ注意していただきたいのは、お墓や弔いは、故人のためのものですが、残された人たちのためでもあることです。

 例えば、故人の希望通りに散骨にしたものの、その後、参拝する場所がないために虚無感にとらわれて後悔する人がいます。樹木葬にしたものの、樹木は生えていない芝生にステンレスの缶にお骨を入れて埋めるのでは、自然に還るのかと疑問に思う人もいます。

 ビル墓は永代供養を謳っていますが、そもそも建物の耐用年数は50年ほどです。補修費や建て替え費の負担はかかってこないのでしょうか。残った子どもたちに負担をかけたくないという思いで簡素で費用の安いお墓のスタイルを選んでも、それがより良い選択になるとは限りません。

 終活がブームだといいますが、大切なのは、お墓に関する情報も広く取り入れ、知識を増やすことです。

 例えば、遺骨を安く引き取ってくれる寺院があるとマスコミなどでも話題になりましたが、それは、いまに始まったことではありません。総本山を謳う大寺院には、昔からそのような制度があるところが少なくありません。

 また、合祀墓というと、無縁仏のお墓と思われがちですが、巣鴨の「もやいの碑」のように、立派な墓碑が建てられ、夫婦で生前に申し込みをする人も多い合祀墓も各地に増えています。

 本当に自分に合ったお墓のスタイルはどういうものなのか、話題にしにくいかもしれませんが、残される人たちも交えて話し合ってみることが、良い終活になるのではないかと思います。

 最後に、私からのおすすめのスタイルは、手元供養です。遺骨、もしくは遺灰をきれいな壺に入れて自宅で保管するのです。これなら、残された人はいつでも故人を偲ぶことができますし、じっくり考えて、より良い制度を有する、優れたデザインの墓地に巡り合ったときに、はじめてお墓に入ることを考えても遅くはありません。まずは、慌てないことが大切です。

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※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

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