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SDGs時代のお墓のあり方とは?

菅野 博貢 菅野 博貢 明治大学 農学部 准教授

市民がくつろげる公園のようなヨーロッパの墓地

 ヨーロッパの墓地は、中世のころまでは、都市の中央にある教会の敷地内につくられていました。しかし、埋葬者が増えてスペースがなくなってきたことと、土葬だったため衛生上の問題から、18世紀ころから街の城壁の外側に、強制的に一斉に移されるようになりました。以後、現代まで、お墓は郊外の墓地に集中するようになっています。

 さらに、墓石が所狭しと並ぶ日本の墓地とは異なり、花や樹木がふんだんにある公園のような場所になっています。実際、市民は墓参だけでなく、散歩しながら訪れ、くつろいでランチを食べたりしているのです。

 また、墓石も個性的です。イタリアでは墓碑彫刻という伝統があり、亡くなった人の姿であったり、天使であったり、動物であったり、様々な形の彫刻が作られ、墓碑になっています。それらは芸術作品と見なされ、地域の財産として受け継がれています。

 また、お墓の主が生前にどのような業績があったのかも記されていて、それらを見ていくとその街の歴史がわかるのです。すると、墓地はただの死者の埋葬場所ではなく、街の歴史を残すという意味のネクロポリスであると感じられます。

 オーストリアのウィーン中央墓地では、墓地内に音楽家エリアとか、政治家エリアがあり、「名誉墓地エリア」となっています。そのエリアには故人の功績にふさわしい墓碑が建てられています。市民は散歩する感覚で墓地を歩き、歴史上の偉人を身近に感じることができるのです。

 フィンランドでは、自然公園のような墓地内に、一般的な墓碑とともに近くの川原から拾ってきたような自然石が無造作に置かれていて、そこに故人を表す小さなプレートが貼られています。究極的に簡素なスタイルですが、故人のプレートさえあれば、そこにお詣りに来ることができます。

 オランダでは、モダンアートのような墓碑彫刻も多く、墓地はまさに現代美術館のような空間になっていますが、それらのお墓は更新制です。遺族が更新を望まなくなれば、墓石は取り壊されて路盤材などに再利用され、空いたスペースはまた別の人が利用します。こうした循環利用のシステムは、国土が狭い国ならではの知恵であるといえます。

 日本では、名古屋市だけが市内の墓地をすべて郊外に移す取り組みを行いました。部分的にヨーロッパのように市民が誰でも気軽に訪れ、くつろげる空間になっています。しかし、墓域については旧来のままで、芸術や歴史を感じられたり、墓石の循環利用を取り入れているところはほとんどありません。

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