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人間らしい暮らしと仕事の創造者「協同組合」

明治大学 政治経済学部 教授 大高 研道

人間らしい暮らしと仕事を地域につくるワーカーズコープ

大高 研道 協同組合とは、資本主義社会を変革したり、補完したりする存在ではありません。資本主義社会の中で、人間らしい暮らしと仕事を回復する活動の主体となるものです。

 その様々な活動の中で、いま、ヨーロッパや中南米など、世界のトレンドになっているのがワーカーズコープです。

 その仕組みは、例えば、高齢者介護が課題となっている地域では、それを解決したいと思った地域の人たちが、お金を出しあって協同組合を立ち上げます。

 そして、その人たちは出資するだけではなく、協同組合の組合員となり、自らが課題解決のために働きます。その活動はボランティアではなく、非営利の(営利の最大化を目的としない)事業活動です。さらに、組合員は組織の運営にも主体的に関わります。

 このような対話的・主体的な実践は、一つの課題を解決すれば終わりといったものにはなりません。なぜならば、一つの課題への取り組みを通して別の課題が必ず見つかるからです。そして、それらの課題を解決するためにさらなる事業を立ち上げます。

 つまり、地域に必要な活動を持続的なものとして事業化していくために、みんなで出資し、みんなで働いて収入を得、みんなで話しあって運営していく。それが、ワーカーズコープです。

 現在、わが国では日本労働者協同組合連合会(労協連)に加盟するワーカーズコープが40年にわたって事業活動を行い、350億円の事業規模と、1万5,000人が就労しています。こうした、市民や働くものが主体者となり、地域に必要な財やサービスを創り出す働き方を「協同労働」と呼び、日本のワーカーズコープは自らを「協同労働の協同組合」と位置づけています。

 重要なのは、地域が必要とするニーズを満たしたり、地域の課題を解決するためにみんなが主体的に協同するということで、そのキーワードは「相互自助(mutual self-help)」です。

 例えば、東日本大震災で被災したいくつかの地域(市町村)に、労協連に加盟している全国組織のワーカーズコープが復興支援のために入りました。当初は、多くのNPOや民間企業も支援活動を行っていましたが、復興支援金がなくなると、それらの団体は去っていきました。

 しかし、ワーカーズコープは全国の組合員から寄せられた基金や行政の職業訓練などの事業委託を活用して活動資金を確保し、今でも、それらの地域で活動を続けています。現在、共生型の福祉拠点や直売所、障がいのある人びとの居場所や就労支援、生活困窮者自立支援などの事業が6つの地域で立ち上がっています。

 組合員の中には力仕事が苦手な人や、精神疾患を抱えてなかなか定職に就けなかった人、ひきこもりだった若者、生活困窮状態だった人もおり、人との関係をうまくつくれず、働き続けることが困難なこともあります。しかし、そのとき、地元の人たちが見かねて「俺たちにまかせとけ」と夕食会に誘ってくれたり、仕事を紹介してくれたりと、いろいろと手伝ってくれます。興味深いことに、支援―被支援という関係がだんだんなくなり、人間的な交流とつながりが生まれるのです。

 すると、居場所を失っていた若者や、被災して元気を失っていた住民のなかに「自分たちにもできることがある」という意識が芽生えはじめ、生きがいややりがいを取り戻し、共に元気になっていったのです。それは、震災で亡くなった人びとに思いを馳せて「残された命を地域や人びとのために役立てたい」という思いとも重なり、大きなうねりとなっています。

 営利を追求する資本主義の暴走を懸念する多くの人たちが指摘してきたのは、市民一人ひとりが分断され、個別化し、孤立することです。人と人の関係性が断絶し、他者への信頼を失っていくのです。

 このような基本的な信頼を失うと、ジョック・ヤングが指摘したように、自分がこの世に存在していることに確信が持てなくなります。

 しかし、人とつながることができれば、その交流の中で、生きていても良いのだという実感が得られていきます。このつながりを生み出していくには、自らが「こうしたい、こうありたい」という思いを出し合い、話し合い、共有し、共通する「何か」の目的に対してみんなが協同することが大切です。

 その「何か」とは、実は、何でもよいのです。みんなが地域で人間らしい暮らしと仕事づくりをめざし、協同する機会をさまざまな形で創り出していくことが重要であり、その活動の主体となる働き方、協同労働が、ワーカーズコープにはあると思います。

 いま、ワーカーズコープの法制化の動きが進んでいます。ワーカーズコープのような「協同労働」という働き方を推進する協同組合が社会的制度になることで、人びとを分断させ、社会的排除と孤立を拡大させる資本主義経済体制の中で、倫理的な経済を創造する主体が全国各地で生まれ活躍することに、私は大きな期待を寄せています。

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※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

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