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日本は、女性の政治参画「後進国」から脱却できるか

木寺 元 木寺 元 明治大学 政治経済学部 准教授

多様な民意を反映させるために女性議員が増えることは重要

 しかし、なぜ女性を優遇するのか、それは逆差別ではないか、という意見もあります。では、女性議員が少ないのは、本当に女性の努力が足りないからなのでしょうか。2016年に内閣府が全国の女性地方議員にアンケートを実施し、その結果から、女性議員の増加を阻む要因として3つの課題を挙げています。一、政治は男性のものという意識(固定的性別役割分担意識)。二、議員活動と家庭生活の両立環境が整備されていない。三、経済的負担が大きい。つまり、政治は男がするものという固定観念が強く、女性が政治に参画しようとすると様々なハラスメントを受けるケースがあったり、議員になっても、出産や育児にともなう休業制度が定められていなかったり(そもそも規定が明文化されていない議会が63%)、託児所や授乳室などの設備が議会施設に整備されていなかったりするのです(授乳室が設置されていない議会はなんと95%)。さらに、選挙資金の自己負担も大きく、平均で6割ほどになっています。ところが、女性議員の比率が高い議会ほど支援が大きく、自己負担の割合が小さくなっています。つまり、日本社会の現状は、政治は男がやるもので、女性は政治に参画などせず、家庭で育児や家事をやっていれば良いとする、前時代的な状況からほとんど変わっていないということです。だとすれば、女性が政治に参画できるように制度や設備を整え、支援することは決して女性を優遇することではありませんし、「候補者男女均等法」も整えるべき制度の一環であると見なすことができるのです。

 政府の「第4次男女共同参画基本計画」では、多様な民意を反映させる観点から女性議員が増えることは重要である、と指摘しています。ところが、女性の意見を吸い上げることは男性議員でもできる、そこまでして女性を政治に参画させる必要があるのか、という意識が男性の側にあるのではないでしょうか。しかし、内閣府の調査を基に、社会学者の大山七穂は、男性の関心が外交や行財政に強いのに対して、女性は、医療や福祉、教育に関心が強いことを明らかにしています。つまり、医療や福祉、教育に関して女性議員が抱く問題意識の高さは、男性議員を上回るのではないかと考えられます。例えば、2017年11月、熊本市議会において、議会施設に託児所の設備がないことを理由に、乳児を連れて議場に入った女性議員の問題が注目されました。この行動には批判も出ましたが、託児所の設備がないことに対する問題提起にもなりました。なぜ、いままで託児所が設置されていなかったのか。それは、議員のほとんどが男性だったからです。つまり、子育ては女性がするものという固定的性別役割分担があったからです。女性議員が増えない課題にも挙がっていた、議員活動と家庭生活の両立の問題は、本来、男性にもあってしかるべきはずの問題です。ところが、子育て世代の女性が議員になったことで初めて、その問題が顕在化したのです。この問題は、実は、議員だけの問題でなく、働く子育て世代の多くの女性が、地域社会や職場で直面している問題でもあるはずです。それを、男性議員ではアジェンダ(議題)にのせることもできず、女性議員の行動によって初めて議論の場に挙がり、争点となったわけです。これは、非常に意義があることであったといえます。

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