明治大学の教授陣が社会のあらゆるテーマと向き合う、大学独自の情報発信サイト

災害大国日本では、保険が中小企業を救う!?

浅井 義裕 浅井 義裕 明治大学 商学部 教授

企業向け地震保険は、中小企業にとっては負担が大きい

 リスクマネジメントといえば、保険を思い浮かべる人が多いでしょう。実際、地震保険に加入している人も多いかと思います。実は、家計向けの地震保険は、ノーロス・ノープロフィットの原則に基づいて、利益も損失も出ないように運営されていて、企業向けの地震保険に比べれば、保険料が安いという面があるのです。ただし、保険金には限度が定められており、被害のすべてを補償するわけではありません。つまり、地震保険で支払われる保険金は、地震によって損害を受けた建物・家財をもとに戻すためではなく、生活を再建していくきっかけの資金としての性格が強いのです。また、支払額が数兆円に達する場合は、政府が大部分の保険金を支払う仕組みになっています。すなわち、家計向けの地震保険は、公的な保険としての性格を有しているのです。これによって多くの人が加入でき、有効なリスクマネジメントの手段になっているわけです。それに対して、企業向けの地震保険(地震危険補償特約として、火災保険の特約として契約することが一般的)には政府の支援はありません。保険会社は保険金の支払いが巨額になることを警戒して、地震保険の引き受けに二の足を踏むこともあります。実際、東日本大震災直後は、地震保険の新規引き受けの一部を停止しましたし、筆者の行った調査でも、地震保険に加入しようとした中小企業のうち約3割の企業が、保険の引き受けを断られたと回答しています。つまり、企業向けの地震保険は、保険会社の商品として売られているので、加入を希望しても加入できないことがあります。また、保険料が高くなれば、加入できたとしても、特に、中小企業にとってはその負担は大きくなってしまうのです。

社会・ライフの関連記事

「ゆすりは自由な取引?」非常識な問いかけが常識を進歩させる

2022.8.19

「ゆすりは自由な取引?」非常識な問いかけが常識を進歩させる

  • 明治大学 専門職大学院 法務研究科 専任講師
  • 菊地 一樹
幕末のパンデミックを日本人はどう乗り越えたのか

2022.7.27

幕末のパンデミックを日本人はどう乗り越えたのか

  • 明治大学 情報コミュニケーション学部 教授
  • 須田 努
原発問題とは、エネルギー問題だけを意味しない

2022.5.18

原発問題とは、エネルギー問題だけを意味しない

  • 明治大学 法学部 教授
  • 勝田 忠広
木賃アパートには、未来社会を構築するヒントがある

2022.5.11

木賃アパートには、未来社会を構築するヒントがある

  • 明治大学 理工学部 専任講師
  • 連 勇太朗
サステイナブルな社会になるために必要な「評価」とは?

2022.4.22

サステイナブルな社会になるために必要な「評価」とは?

  • 明治大学 専門職大学院 ガバナンス研究科 教授
  • 源 由理子

新着記事

2022.08.19

「ゆすりは自由な取引?」非常識な問いかけが常識を進歩させる

2022.08.09

自分を活かせるライフワークを見つけよう

2022.08.05

KAMの導入によって企業と環境変化が理解できる

2022.08.01

ボルボ・カー・ジャパンのトップと語る 自動車業界の未来とブランディングの重要性

2022.07.28

自由に取り組んで、自ら学ぶ力を得よう

人気記事ランキング

1

2020.04.01

歴史を紐解くと見えてくる、台湾の親日の複雑な思い

2

2018.01.26

#3 日本国憲法は「押しつけられた憲法」か?

3

2018.11.06

#2 日本政府の借金はなぜこんなに膨らんだの?

4

2019.02.13

現代人が取り戻せず、潜伏キリシタンが250年間失わなかったもの

5

2017.10.18

ゲーテッド・コミュニティの実態に迫り、その“可能性”を探る

連載記事