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衰える結婚、止まらぬ無子化 ――このままでは日本の未来が失われる

加藤 彰彦 加藤 彰彦 明治大学 政治経済学部 教授

恋愛結婚の壁 ――異性と交際しない未婚者の急増

加藤 彰彦
資料: 加藤彰彦・中村真理子「共同体的結婚慣習の衰退と未婚化・晩婚化の進展Ⅱ」
(2017年日本家族社会学会大会研究発表資料にもとづき作成)
 2015年の統計を使って、25~29歳男女のパートナー関係(異性関係)をみてみましょう(社人研「出生動向基本調査」)。まず女性では、この年齢層の39%が既婚者であり、交際相手(婚約者・恋人・男友だちなど)のいる未婚者が26%、交際相手のいない未婚者が34%です。一方、男性では、既婚者が27%、交際相手のいる未婚者が21%、交際相手のいない未婚者が50%になります(残りの2%は不詳)。恋人や配偶者探しの最盛期であるはずの20代後半において、女性の3分の1、男性の半数が異性関係を持っていないのです。

 もっとも、日本社会では、こうした若者の恋愛下手はいまに始まったことではありません。戦後、日本人の結婚は「見合い結婚から恋愛結婚に変化した」と言われてきましたが、昨年私は日本家族社会学会の年次大会において、こうした理解が未婚化の実態を正しく反映していないことを指摘しました。図2はその中心的な論点を要約したグラフです。ここでは、30歳時点の女性のパートナー関係を、既婚者についても出会い方の種類によって分類して、1982年と2015年の間で比較しています。

 このグラフからわかるように、確かに、両家の両親が揃って顔合わせをするような、昔ながらのお見合いは衰退しました(図2の「見合い結婚」は結婚相談所による紹介を含む)。しかし、友人、知人、兄弟姉妹などの紹介によって知り合い、結婚する女性の割合は減っていません。また、かつては社内結婚のように職場をベースに知り合い、結婚するケースが数多くありました。特に昭和の企業経営者たちは、若い社員たちを結婚させ、家族形成させることも、彼らを育てる自らの社会的責任と捉えて(いわゆる寿退社を想定してはいましたが)若年女性を大量に雇用し、社員がつきあい始めると儀礼的仲人(媒酌人)の役割を買って出ました。現在ではこうした企業と経営者は少なくなったものの、職場結婚は紹介結婚に次ぐ重要性をもっています。学校やサークルなどの仲間関係をベースに結婚するケースはほぼ横ばいの状況で、職場結婚の減少を埋め合わせられていません。

 街なかや旅先、アルバイト先で誰の世話にもならずに自ら知らない異性に声をかけ、恋愛に発展させて結婚に至るパターンは、多くの日本人があこがれてきた、世間のしがらみから自由な恋愛結婚です。しかし興味深いことに、その割合は8%程度の少数派で、時代的な変化もみられません。一方、未婚者についてみると、交際相手のいない未婚者が5%から25%に急増しています。その割合は、ちょうど見合い結婚の減少分(25%から1%へ)とつり合います。この結果は、見合い結婚の衰退が交際相手のいない未婚者の増加をもたらしたことを示唆しています。前述のように男性は女性以上に深刻な状況です。詳細は省きますが、ただ1点、異性と交際しない世代が生まれたのはバブル経済以降、彼らの親たちはほとんどが自称「恋愛結婚」をした1960年代生まれであることを指摘しておきましょう。私たちは、恋愛結婚の幻想を手放す時期に来ています。

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