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2013.12.01

環境保全は企業に利益をもたらす ―求められるエコ・テクノストラクチャーとエコ・プロシューマ―

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実証された「公害防止は儲かる」仮説

 公害防止のノウハウ・装置の販売によってそれらの開発投資を回収し、「儲け」を生み出すという考え方は欧米に端を発する。ある大手化学メーカーが考案・採用し推進した「公害防止は儲かる(Pollution Prevention Pays=3P)」計画がそれである。その実証を踏まえ1970年代末に環境経営学者M.ロイストンが、「公害防止は儲かる」を著作のタイトルとした3P仮説を提唱、その仮説は先進国の多くの企業事例で実証された。
 国内でも「公害防止は儲かる」ことを実証した企業は少なくない。たとえばある繊維メーカーは、自社工場の公害対策として大気汚染防止装置や水処理装置などのエコ技術を開発、それを装置化および特許化して他社に販売、さらに米国企業にも技術供与した。これらの収入は自社開発費を補填するに十分であり、利益の捻出に寄与したと考えられる。
 また、ある化学メーカーでは大気汚染対策として、排煙脱硫装置を開発・稼働させ、それら装置を同業種および他業種に幅広く販売した。さらに前出の繊維メーカー同様、海外への技術輸出などによって確実な利益を得た。
 これら環境保全的な志向性を表出し、企業の意思決定に関与した人的資源を端緒的な「エコ・テクノストラクチャー」と呼ぶ。かつての彼らの取り組みは、技術的には汚染物質の末端処理を目指した対症療法的なものだった。80年代以降、予防措置優先の原則を内面化し、省資源・省エネ効果をも包括した総合的な汚染対策を志向する本格的な「エコ・テクノストラクチャー」が登場し現在に至っている。その育成も私のミッションの一つである。

※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

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