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ネット依存によって、現代人の脳の構造が変わりつつある!?

大友 純 大友 純 明治大学 商学部 教授

いま、「ネット依存症」が問題になっているといいます。以前から、ネットに夢中になり、仕事や家事、勉強などに手につかないことが問題視されていましたが、それだけでなく、人の脳の構造に影響を与えているといいます。それは、どういうことでしょうか。

SNSなどへの投稿がきっかけで増長する「自己愛性パーソナリティ障害」

大友 純 いまや、スマートフォンなどの携帯通信機器が普及し、持ち歩いていない人はほとんどいないのではないでしょうか。電車の中では多くの人がスマートフォンを操作しているし、スマートフォンを見つめたまま街を歩く人も少なくありません。S.タークルの『一緒にいてもスマホ』(青土社,2017年)によれば、それは日本に限ったことではなく、いま、アメリカではphubbing(ファビング)という言葉が広まっているそうで、スマートフォンに気を取られ、目の前にいる人を無視する行為を言うのだそうです。彼らはスマートフォンを片時も手放さず、目の前の現実のことよりも、常にSNSなどの情報などを気にしているのです。特に若者などは、目の前の人に目を向けたまま、メールを打つこともさほど難しくはないと言います。物心がついた頃から身の回りに携帯のネットワーク機器があった世代にとっては、ファビングも環境に適応したライフスタイルであり、特別なことをしているとは感じていないのでしょう。しかし、逆にスマートフォンを持っていないと落ち着かないという彼らは、明らかにネット依存症ではないかと思うのです。
 ネット依存症については、ずいぶん前から指摘する声が上がっていました。例えば、アメリカの臨床心理学者のキンバリー・ヤングは、1994年頃にはインターネットの利用が精神に及ぼす影響について調査し、ネット依存症が精神疾患であると分類しています。近年では、2012年にアメリカの心理学者のラリー・D・ローゼンが著わした「iDisorder」(邦題「毒になるテクノロジー」)がよく知られています。その中では、いまファビングと呼ばれているような行動がすでに指摘されていますし、学生にSNSを1週間禁止する実験では、落ち着かず不安でたまらない、と被験者たちは言い出し、実際に実験を守れた学生は10%~15%しかいなかったことが記されています。また、日本では、昨年、障害者施設を襲撃して大量殺人事件を起こした容疑者が、「自己愛性パーソナリティ障害」であったことから一般にも知られるようになったこの精神障害についても、SNSや投稿サイトとの関係が論じられています。「SNSやインターネットが提供する様々な機会や選択肢によって、人々は『自分が世界からどのように見られたがっているのか』を示せる」ので、「自分をことさら宣伝するような、傲慢で誇張されたあなたのイメージを提示する必要はない」にもかかわらず、「それらの選択は、ある種のナルシズムを促す。プロフィール用に使う写真を選ぶとき、私たちは写りの良い1枚を選ぼうとするはずだ」というわけです。そして、実物とはかなり違う、明らかに写りが良くなるように加工したプロフィール写真を使っている人や、SNSを通じて知り合った人に会ってみると、一緒にいた1時間半の間、自分の自慢話しかせず、目の前にいる初対面の人のことについて、何ひとつ尋ねなかったという人の例などが紹介されています。つまり、自己愛やナルシズムは多かれ少なかれ誰にでもあるものですが、SNSなどがそれを増長させるきっかけとなり、自らに特権意識をもち、他者への共感に欠ける精神障害につながっているのではないか、とそれらの本ではいうわけです。

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