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2017.07.05

生まれる子の福祉を第一に考えて、生殖補助医療法の早期制定を!

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日本の民法では、代理出産でも、子どもを出産した女性が母

 母は、誰かという問題も起きています。2003年、タレントの夫婦が、アメリカのネバダ州で自分たちの受精卵によって代理出産を行ったところ、生まれた子の出生届が日本では受理されず、夫婦が訴訟を起こしたケースは覚えている人も多いのではないでしょうか。ネバダ州は代理出産を認めていて、このケースでも、日本人夫婦が父母であるとの判決をネバダ州の裁判所で得ていました。ところが、日本の最高裁は、公序良俗に反するとして、ネバダ州の判決を認めませんでした。最高裁は、日本の民法では、子を懐胎出産した女性が母であるという解釈を示したのです。その結果、法律上、子どもの母親は、アメリカでは血縁上の母である日本人、日本では子どもを産んだアメリカ人ということになってしまったのです。これで、子どもの福祉が守られるでしょうか。

 日本産科婦人科学会は、会告で代理母出産を禁止していますが、現実には、日本でも代理出産は行われています。長野県のあるクリニックでは、子宮に問題があって子どもを産めない娘夫婦の受精卵を、その娘の母親の子宮に移植し、母親が娘に代わって懐胎出産したことが知られています。このケースでは、出産した血縁上の祖母を母として出生届出し、血縁上の母である娘夫婦が特別養子縁組をしました。戸籍上、実親も親として記載され、子どもは養子と記載される普通養子と違い、実親との関係が切断される特別養子ならば、法律上も戸籍上も、娘夫婦だけが親となります。先のタレントの夫婦のケースも、最高裁が特別養子縁組制度を利用することを示唆し、夫婦もそうしたようです。

※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

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