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児童虐待をなくすには社会全体で育児をサポートすることが必要

加藤 尚子 加藤 尚子 明治大学 文学部 教授

虐待は深刻なトラウマとなり、虐待の世代連鎖も引き起こす

 では逆に、虐待などによって不安定なアタッチメント関係にあった場合はどうでしょう。自分が危機的状況にあるとき養育者に頼りたいというアタッチメント行動をとっても、養育者は守ってくれなかったり、逆に攻撃されることもある。こうした虐待を繰り返し受けてしまうと、誰もが自分を殴るのではないかと思い、他人を信用せず、この世の中は危険に満ちて、自分は取るに足らない人間だ、人と関わらない方がいい、という『色眼鏡』を形成してしまいます。すると、困ったときにも人に助けを求められない、助けてくれる人に背を向ける、あるいは攻撃するという行動を取るようになってしまうこともあります。また、肯定的な自己イメージがもてず、「どうせやったってダメに違いない」とチャレンジをしなくなったり、早く挫けるようになります。最近の研究では、幼児期の虐待は深刻なトラウマとなり、脳の発達に影響を与えることもわかっています。例えば、記憶と感情を司る部位が一般より小さくなってしまい、自分で自分の感情や行動をコントロールできないADHD(注意欠如多動性障害)に似た状態を引き起こすこともあります。

 さらに問題なのが、虐待を受けた子どもが大人になって親になったとき、自分の子どもに対して虐待してしまったり、うまく関われないという虐待の世代連鎖が起こることです。もちろん、虐待経験がある人はみな、虐待する親になるわけではありません。6~7割は辛い体験を乗り越え、子どもをしっかり育てられるようになります。しかし、3割くらいの人は、例えば自分の子どもがだっこを望んでも、それを面倒なことと思ってしまったり、怒りを感じたり、子どもに要求に関心が持てないなどの事態が起きてしまいます。自分自身が幼児期に様々な欲求を我慢させられたり、甘えたいという欲求を抑圧してきたので、自分の子どもにも我慢させることが当然のように思ってしまい、子どものペースに合わせることができず、自分のペースを守ろうとしたり邪魔に感じてしまうのです。なかには、子どもが甘えてきたらちゃんと抱きしめてあげることが大事だと、頭ではわかっていても、自分自身がずっと甘えることを抑え込んできた辛さや、悲しさ、悔しさ、怒りなどの感情が出てきてしまい、子どもを自然に素直に受け止めるのが難しいというケースもあります。

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