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児童虐待をなくすには社会全体で育児をサポートすることが必要

加藤 尚子 加藤 尚子 明治大学 文学部 教授

虐待のない育児のためにもサポートが重要

加藤尚子 では、そのような不安定型のアタッチメントの人は変わることができないのかといえば、決してそんなことはありません。変わるために一番大きく影響するのは、恋人や配偶者など、パートナーとの関係です。不安定型のアタッチメントの人の気持ちを理解し、日常の行動の中で気持ちを理解し、具体的に慰めてくれたり、一緒に育児をしてくれたりする、サポーティブなパートナーがいると、不安定なアタッチメントパターンから獲得安定型のアタッチメントを持つことができるようになるのです。

 実は、こうしたサポートは不安定型のアタッチメントの人だけでなく、一般の人にとってもとても重要です。日本では、まだまだ育児は母親の仕事と思われていますが、お母さんが一人で育児をするストレスはとても高いのです。例えば、おむつを替えたり、食事をさせるのはお母さんでも、そばにお父さんがいて、「大変だね」と思いやりのある言葉を掛けてくれたり、頑張りを認めてくれたり、あるいは「ちょっとやってあげようか」と声をかけるなど、温かい関心と目が向いているというだけでも、ストレスは軽減されるのです。子どもに一人で向き合い、自分がすべてやらなくてはいけないという状況によるストレスが感情のコントロールを失わせ、子どもとの関わりの質を低下させてしまったり、虐待の原因になることもあるのです。

 アタッチメントは子どもと親との一対一関係と思われがちですが、アタッチメントの質は、実は、アタッチメント対象になる大人が自分の配偶者やパートナーからサポートしてもらっている感覚があると、子どもとのアタッチメント関係の質も良くなることがわかっています。最近、男女共同参画が重視されるようになり、育児でもイクメンという言葉が肯定的に使われるようになってきました。私はさらに一歩踏み込んで、子育ては社会全体の責任という意識を形成したいと思っています。親は自分のパートナーからだけでなく、社会から子育てを応援してもらえる、見守ってもらえてる、支えられているという実感がもてるようになると、子どもへの関わりの質も良くなるのです。

 最近、しつけのために子どもを山中に置き去りにしたことがニュースとなり、しつけと虐待の違いについて質問されることが多いのですが、答えはすごくシンプルです。親の思いや意図は関係なく、子どもの心や身体を傷つけていないか、子ども目線で自分の行為を見ることです。「あんたが悪いことをするから」と、自分が怒ったり叩いたりした原因を子ども側にあるという言い方をするときは、感情的になっていて自分の怒りが抑えられなくなり、子どもを傷つけていることにも気づかなくなっているときです。そんなとき、親の周りにたくさんの目やサポートの手があれば、子どもも救われるし、親も救われるのです。

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※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

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