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2021.02.24

ストレスから救ってくれるのは、老化の主犯の活性酸素!?

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物事を多面的に捉えると新しい発見がある

 もちろん、植物の細胞と動物細胞は違います。植物が行っていることを人がそのまま行えるわけではありません。しかし、植物が行っていることをひとつの機能的な仕組みと捉えて応用を考えることはできます。

 すなわち、大切なのは、例えば、活性酸素であれば、その一面だけを捉え、悪者、厄介者と決めつけて見ないことです。物事を一面ではなく、多面的に見ることで理解が広がったり、そこに新たな可能性を見出すことができるようになることもあるのです。

 例えば、先に述べたように、植物の根をすり潰さずに滲出物を測定しようと思っても、通常、根は土の中にあるので、その土壌から根の滲出物を分析するのは大変です。

 しかし、本学には水耕栽培の研究をされている先生がいたことから、水耕液を分析対象にすることを着想したのです。すると、研究はそこからさらに広がっていったのです。

 通常の水耕栽培ではポンプを使って水耕液の中に酸素を送り込みます。酸素が不足する環境だと根は腐ってしまうからです。

 ところが、本学の先生はポンプを使わずに、水耕液の水面と植物の地上部の間に空気がある状態を作り、水耕栽培を行っていました。

 この水槽内の酸素の量を測定すると、水面に近い部分は酸素が豊富に溶けているのですが、底にいくほど酸素がなくなっていることがわかります。

 すると、植物の根は水面付近で生い茂り、水槽の底の方には伸びないのです。しかし、それでも植物は充分に育ちます。葉物野菜などは充分な収穫となるのです。

 すると、ポンプを設置したり、それを動かす電気が必要な通常の水耕栽培に対して、非常に省エネな栽培方法ということになるわけです。

 すなわち、エネルギーをかけて根を伸ばしてやれば、植物は養分をたくさん吸うことができるようになり、それによって葉や実の収穫量が増えると思いがちですが、収穫物を得るエネルギー・パフォーマンスで見ると、効率的なバランスがあるということです。

 人は、物事を当たり前と思われている面からしか見ていないことに、実は、なかなか気づきませんが、多面的に見ることができれば、やはり、そこには新たな発見や可能性を見出すことができるのです。

 実は、老化のメカニズムに活性酸素が関与していることは事実です。活性酸素が細胞障害を加速するからです。

 そんな活性酸素が増えるのは、ミトコンドリアの異常によるものであることがわかっています。では、なぜ異常なミトコンドリアが増えるかといえば、細胞質成分の代謝回転を担っているオートファジーと言われる機能が衰えるからです。

 すると、効果的なアンチエイジングを考えるならば、オートファジーの機能を低下させない方法もあることになります。実際、そうした研究も進められています。

 活性酸素ばかりを悪者にする見方で老化を捉えるのではなく、多面的に見ていけば、様々な対処法も着想できるようになります。

 そのために、実は、私たちには見えていないものを見える化する分析化学は重要ですし、とても面白い分野だと思っています。


英語版はこちら

※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

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