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軽い!強い!錆びない!次世代構造材CFRPの用途を広げる

岩堀 豊 岩堀 豊 明治大学 理工学部 教授

トライアンドエラーから広がるCFRPの可能性

岩堀 豊 私たち生活者にとって、CFRPは生活をより快適に楽しくしてくれる素材として期待して良いと思います。

 例えば、ゴルフクラブやテニスラケットの性能の進歩は、材料の進化、すなわちCFRPの適用による貢献が大きいと思います。また、片手で持ち上げられるほど軽いCFRP製の自転車も人気です。軽く長くなった釣り竿や、陸上競技で活躍されている選手が利用している義足にもCFRPが使われています。軽量でかつ剛性や強度を自由に設計できるという特徴を利用すれば様々な製品に適用できる可能性があると思います。

 旅客機の話になりますが、CFRPは旅客機の乗り心地をより高めることにも貢献しています。金属材料が大半の従来機体では、機内をカラカラに乾燥させて金属の錆を防ぐ必要がありましたが、CFRPを使用した機体(B787やA350等)では、金属腐食の心配が少なくなりましたので、機内を加湿できるようになりました。

 また、旅客機が地上10kmくらいの上空を飛んでいても、機内は富士山の5合目並みの圧力に加圧しておくことがCFRPを使用することで可能となりました。アルミニウムだと壊れてしまうような、加圧、減圧の繰り返しでも、疲労強度の強いCFRPであれば耐えられるからです。このように、機体材料の変化が旅客にとっての乗り心地改善へつながっているのです。

 今後、CFRPは自動車をはじめ、建設、防災対策など様々な分野へ利用されることが期待できます。

 現在、世界中の自動車メーカーはCFRPを適用するための技術開発を猛烈に進めています。実現すれば、車体は大幅に軽量化され、燃費は大きく向上します。それは、それほど遠い未来のことではないと思います。

 また、建設用の材料、災害対策用構造物の材料としても注目されています。現在、劣化したコンクリート柱を補強する方法として、鉄板を巻き付ける技術があります。その鉄板に代わり、錆や腐食のないCFRPを使えばより効果的に補強できると言うわけです。

 CFRPを用いて運搬可能な軽量の橋を造るという研究開発も進められています。災害などで橋が損壊した場合、短時間に橋を運搬して設置できれば、災害地の復旧を早めることが期待できます。

 以上のように、様々な可能性を秘めたCFRPですが、先にも述べましたように実用の歴史が浅く、様々なトライアンドエラーが続いています。これはCFRPが未だ技術を積み上げる必要のある材料であることに他なりません。

 既に就航し世界中を飛び回っているB787でさえ、開発試験においてはCFRPの構造部位が破損し、開発が遅れたという事態が発生しています。CFRPは素晴らしい材料であるとともに、その特性をよく理解して使用する必要があるのです。

 航空構造材料研究室では、今後もCFRPを工業製品に多く使用してもらえるよう、研究成果やそれらのデータを世の中に発信していきたいと思います。

 話は変わりますが、2020年春から世界中に拡大したCOVID-19感染症の影響もあって、日本初のジェット民間旅客機であるスペースジェットの開発は凍結されてしまいました。スペースジェットにも部分的にCFRPが適用されています。COVID-19感染症が収束し、人々の移動への需要が高まることを願うとともに、スペースジェットの開発が再スタートできることを楽しみにしています!

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※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

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