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「フェイクニュース」は「嘘ニュース」のことではない

大黒 岳彦 大黒 岳彦 明治大学 情報コミュニケーション学部 教授

新たな構造を描くためのヒントがビットコインにある

大黒 岳彦  もちろん、アカデミズムやジャーナリズムに絶大な権威が無条件に認められていた時代に戻るべきだ、と言っているわけではありません。しかし、インターネット社会が良い状況にある、とはいえないのは確かです。

 インターネットがメディアの枠組みとして確立し始めた2011年からまだ8年で、現在は過渡期といえます。今後、インターネット社会はどのような構成が可能なのか、少なくとも、新たな構造のビジョンを描くことは必要で、それは、哲学が取り組むべき課題ではないかと考えています。

 例えば、価値というものをどう捉えるか、ということです。現在は、数をアフィリエイトの仕組みで経済的な価値に連動させています。

 しかし、さきに述べたように、数による価値構造は極めて不健全な体制だと思っています。それに対して、良いヒントがビットコインの仕組みにあります。

 仮想通貨というと、一般には、既存の貨幣との相場ばかりが注目されますが、重要なのは、仮想通貨がそもそもなぜ価値を持っているのか、ということなのです。本来は玩具のお札と同じで現実社会では価値をもたないはずのビットコインに、どこから価値が生まれているのかといえば、ブロックチェーンによるマイニングです。その構造が、実は重要なのです。

 簡単に言うと、ビットコインは、ビットコインのシステム全体の監視と承認を司る、PoW(プルーフオブワーク)というコンピュータの「労働」を価値とみなしているのです。

 実は、そこでは大量の電力が消費され、環境問題が課題となっていますが、労働が根底にないと価値は発生しないことを、ビットコインは証明したと思っています。

 これは、経済的な価値の問題ですが、それにとどまらず、一般に「価値」というものが、フラットなインターネット社会の中で、どう創出されるのか。それが数によるものではないことを考えていくことは、非常に重要なことだと考えています。

 例えば、アカデミズムにしろ、伝統芸能にしろ、その権威を成立させるためには長期の研鑽という面倒な手続きが必要です。が、インターネット社会では検索という簡単な方法で膨大な知識が得られます。

 すると、長期の研鑽という「労働」よりも、簡単に得られる膨大な知識という「数」に価値を感じがちになりますが、その膨大な知識は、情報の断片であり、そのままでは瑣末な知識に過ぎないのです。

 重要なのは、その瑣末な知識をどう編成していくかという大局的スキルです。そのスキルを高めるために、長期の研鑽も必要なのです。

 インターネット社会の新たなビジョンを描くことは、哲学の課題と述べましたが、一方で、一般の生活者の皆さんや、さらに学生たちは、インターネットやツイッターの断片的な情報に満足するのではなく、それらを結びつけてひとつの像を浮かび上がらせるための、幅広いだけでなく有機的な知識と教養を身につけることを意識して欲しいと思います。

 実は、伝統や権威を重んじる意識の強いヨーロッパでは、それらを相対化させるインターネット社会を警戒する傾向があります。

 それに対して、権威の相対化や数の価値観が顕著に現れているのが日本とアメリカです。安倍首相とトランプ大統領のジャーナリズム軽視の姿勢などは、その象徴といえます。

 私たち市民が断片的な情報ばかりで物事を判断していては、まさに、為政者の「由らしむべし知らしむべからず」という政策に操られるままになってしまうでしょう。

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※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

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