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2018.08.08

紙幣を持ち歩くのは時代遅れ!?

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まず、身近なフィンテックの知識を身につけよう

 フィンテックは、最新のテクノロジーによる大規模な金融改革であるかのようなイメージを持ちがちですが、そうした側面ばかりに目を奪われるのではなく、既存の技術も使いながら、身近なところで様々なイノベーションが起きようとしていることに目を向けてほしいと思います。例えば、仮想通貨を支える技術として注目されるブロックチェーンは、分散型台帳技術という新しい技術です。これを様々な金融インフラに応用させていくことができれば、現在、各種の金融サービスにかかる手数料やシステムの運用コストを画期的に下げることができるといわれています。しかし、高度に発達した現在の金融インフラに分散型台帳技術をすぐに取り入れることは、相当にハードルが高いといえます。サイバー攻撃に対して十分な備えを講じる必要もあります。このため、多くの国の中央銀行や金融機関が調査や研究を行い、潜在力のある技術であると認めていますが、この技術の全面的な実用化に向けては、もう少し時間がかかりそうです。むしろ、ユーザーの利便性を高めるという、ユーザーのニーズを踏まえたキャッシュレス化は、すでに確立されている既存の技術も使いながら着実に進んでいるのです。

 このユーザーのニーズを掘り起こすという発想が重要です。例えば、日本は自然災害の多い国です。スウェーデンのように紙幣を持ち歩かない環境になってしまうと、電気や通信網が止まる、システムがダウンするという災害が起きたとき、被災者は生活を支えることができなくなってしまいます。日本では、紙幣と電子マネーやデジタル通貨が共存するような環境を設計することが重要です。すると、ユーザーはキャッシュレス化が進む下でも、多様な支払手段の選択肢を持つことができ、自分のライフスタイルに合った支払方法を選ぶことができます。それが、日本人にとっては安心をもたらし、利便性の高い環境といえるのかもしれません。また、フィンテックを使って、学生のキャンパスライフのデジタル化をどのように進めていくかという論点もあります。例えば、デジタル化された学生証に電子マネー機能を付加し、キャンパス内外で『めいじろうコイン』を使えるようにすれば、これを使って新たなサービスを展開するとか、ユーザーニーズを掘り起こしていこうというきっかけになるかもしれません。フィンテックがやってくるのを待つのではなく、フィンテックを使おうという気になれば、キャッシュレス化への関心も高まり、それが私たち自身の利便性の向上や長い目でみた資産形成にもつながります。そのための知識を身につけていくことが、金融リテラシーなのです。

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※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。

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