実際のユーザーの姿を見られるワークショップは重要な情報源
私は、このソフトを使って小学生を対象に親子で参加するワークショップを行っています。最初にソフトの使い方を30分くらいで説明します。子どもたちはその後、ぬいぐるみのデザインを始めます。外形を描いたり、物体を横切る線を描くことでその物体をカットしたり。突起をつけたり、パーツを摘まんで引っ張ったり・・・。3次元モデルをデザインしていくと、それに応じて型紙が自動生成され、できあがりのシミュレーションも変化します。子どもたちはお絵かきソフトで遊ぶ感覚で、30分ほどでデザインを完成させていきます。その後、できあがったデザインの型紙をプリンタで出力し、あとは親子で協力して縫い上げてもらいます。スタートから4時間ほどで、自分だけのオリジナルなぬいぐるみが完成します。
こうしたワークショップを開催し、実際に子どもたちがソフトを使っている姿を観察することは、私の研究においてとても重要です。子どもたちが本当に楽しんでいるのか、創造性を支援できているのか、また、逆に何に困っているのか、その場で観察することは、研究室で考えている以上に大きな情報になります。例えば、初めてのワークショップの際に「さぁ、デザインをしてみましょう」と言っても、手の動かない子が少なくありませんでした。どんなデザインのぬいぐるみにするか考え中なのか、それとも作りたいものは浮かんでいるがどのようにデザインしたら良いかわからないのか、はたまた単純にシステムの使い方がわからないのか…。見ている私たちスタッフには、わかりませんでした。そこで、紙と鉛筆を配布したところ、紙にならデザインを描ける子もいたことで、子どもたち一人ひとりで異なる戸惑いや、やりたいデザインに応じたアドバイスが必要であることがわかりました。また、自分だけのオリジナルデザインを考えることで創造性を育てたい、というのが目的だったのですが、一からデザインをするということはそもそも難しいということもわかってきました。このような経験は、その後ネックレスのデザインソフトを開発する際、ストックされた第三者のデザインを組み合わせながらオリジナルデザインを作る、対話型進化計算を取り入れたシステム開発にもつながっていきました。
※記事の内容は、執筆者個人の考え、意見に基づくものであり、明治大学の公式見解を示すものではありません。