明治大学の教授陣が社会のあらゆるテーマと向き合う、大学独自の情報発信サイト

日本がアメリカの大統領選挙に学ぶこと

明治大学 政治経済学部 教授 海野 素央

科学的になった戸別訪問

海野 素央 こうしたトランプ氏の支持者の生の声を聞くことができたのは、私が運動員として戸別訪問に参加したからです。戸別訪問は、日本では公職選挙法第138条によって選挙期間中は禁止されています。政治活動として行なう場合でも、ただ「お願いします」だけを言って歩くドブ板作戦とか、そっと金銭の授受をして歩くような暗いイメージがありますが、アメリカでは戸別訪問はもちろん合法ですし、票を稼ぐのに最も効果的な選挙作戦といわれています。この戸別訪問を科学的作戦にまで高めたのが、かつてのオバマ陣営であり、現在ではクリントン陣営がその手法を取入れています。

 運動員一人ひとりに、その手法をトレーニングを通じて取得させています。まず、ニューハンプシャー州では「説得は相手に物語を語らせること」と教えられます。例えば、戸別訪問先で相手が誰を支持するか決めかねているとき、まずは、どういった争点に興味があるか尋ねます。医療保険制度改革だと言えば、なぜなのか積極的に聞きます。相手に医療保険に関する思いやストーリーを語らせ、次に、それについて自分もストーリーを語ります。相手のストーリーと自分のそれが重なったときに、説得が生まれるというロジックです。

 相手が投票を約束してくれると、コミットメントカード(お約束カード)に署名をしてもらいます。このカードを持って帰り、投票日の数日前に送り返します。このカードには法的拘束力のようなものはありませんが、受取った相手に心理的プレッシャーをかけることになり、投票率が上がるのです。また、コミットメントカードとは別に、投票日の計画を作らせます。投票には何時に行くのかと質問し、午前中か、昼食のついでか、会社帰りか、などと具体的にイメージさせるのです。これによっても投票率は上がります。オバマ陣営は、戸別訪問をドブ板から科学に変えたのです。

国際の関連記事

フランス人はなぜデモを続けるのか

2019.7.17

フランス人はなぜデモを続けるのか

  • 明治大学 経営学部 教授
  • 川竹 英克
社会凝集力は偏見も生む。自分をもっと自由に解放してみよう!!

2019.6.19

社会凝集力は偏見も生む。自分をもっと自由に解放してみよう!!

  • 明治大学 政治経済学部 教授
  • 鍾 家新
外国人労働者受け入れ拡大の成功には教育の力が必要!!

2019.3.20

外国人労働者受け入れ拡大の成功には教育の力が必要!!

  • 明治大学 国際日本学部 特任教授
  • 佐藤 郡衛
東京2020ボランティアに秘められたメッセージ

2019.3.6

東京2020ボランティアに秘められたメッセージ

  • 明治大学 政治経済学部 教授
  • 後藤 光将
グローバル化は人を自由にする?アイデンティティを脅かす?

2019.2.6

グローバル化は人を自由にする?アイデンティティを脅かす?

  • 明治大学 経営学部 准教授
  • 折方 のぞみ

Meiji.netとは

新聞広告連動企画

新着記事

2019.07.17

フランス人はなぜデモを続けるのか

2019.07.10

男か女かハッキリしたがる/させたがる不思議

2019.07.03

遺伝子組み換えが怖いのは、目先の利益で行っていること

2019.06.26

人から、メタボやアレルギー性疾患がなくなる!?

2019.06.19

社会凝集力は偏見も生む。自分をもっと自由に解放してみよう!!

人気記事ランキング

1

2019.07.10

男か女かハッキリしたがる/させたがる不思議

2

2019.07.17

フランス人はなぜデモを続けるのか

3

2014.09.01

緊急提言、人口減少社会に歯止めをかける ―方策は少子化対策、社会…

4

2018.05.23

衰える結婚、止まらぬ無子化 ――このままでは日本の未来が失われる

5

2017.10.04

精神鑑定は犯人救済のために行うのではない

Meiji.net注目キーワード

【注目!】連載コラム