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日本がアメリカの大統領選挙に学ぶこと

海野 素央 海野 素央 明治大学 政治経済学部 教授

運動員として選挙活動に参加することで実感できること

 実は、トランプ氏の支持が下がった時期がありました。しかし、2015年11月にパリ同時多発テロがあり、カリフォルニア州でも過激思想に染まった男女二人が銃を乱射するという事件が起き、それを境としてトランプ氏の支持率は上がっていったのです。彼は集会で、メキシコからの不法移民がアメリカ人女性を殺害した事件も引合いに出し、人々が異文化に対して抱く恐怖心をあおり、不安感を募らせておいて、自分こそがアメリカを再び偉大な国にすると力強く訴え、彼に希望を感じさせるのです。そのロジックは一貫しており、巧妙でもあります。トランプ氏の支持者は、誰もが「彼の言っていることは正しい。偏見などではない」と自信をもって語るのです。

 2015年の夏から研究の一環としてクリントン陣営に運動員として参加し、1186軒の戸別訪問を行なった私は、実際にトランプ氏の支持者にも会っています。東部ニューハンプシャー州で戸別訪問していると、白人の労働者の男性が、「女が大統領になったら、あんたは嫌だろう」と平然と言っていました。「トランプだったらお前に職を与えてくれる」と語った白人男性もいます。不動産業で成功したトランプ氏は、経済問題を立直らせると信頼されているのです。「イスラム教徒を全面的にアメリカに入国させない、と言ったトランプは正しい」と主張した支持者もいます。アジア人である私を見て「お前は(不法)移民じゃないのか」と言うトランプ支持者もいました。異民族に対して嫌悪感があり、不寛容である彼らにとって、トランプ氏は不法移民やテロの問題を解決してくれる「頼りになる強いリーダー」なのかもしれません。因みに、英語のトランプには「頼りになる人」という意味があります。支持者にとって、「トランプ」という言葉がもつ語感が彼らの耳に心地よいのです。

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